2024.01.24
古書
2024.01.24
「謡曲の本をいろいろ持っていて家に眠っている」「買取を依頼したいがどこで売れるのかがわからない」という人もいるのではないでしょうか。
買取が可能かどうか、どんな本に価値があり、どこで売れるのかなどを紹介します。
目次
謡曲の本、「謡本(うたいぼん)」とは、能の舞台の中の一曲の「謡(うたい)」の部分を抜き出した楽譜のことです。楽譜と言っても、謡曲の詞章を書き、脇に節付を表す符号や注記が書かれているのが特徴です。詞章の横の小さな点はゴマ点と呼ばれ、この向きや形によって、旋律的な動きが表されていて、謡曲をうたうためのテキストとなっています。リズムや演出などについても注記がありますので、これを見て能の謡の稽古をすることができる本です。
謡曲の本の見た目の特徴としては、きちんと和綴じで製本がされていて印刷されている点が挙げられます。謡曲の本「謡本」の始まりは歴史が古く、江戸時代初期に、京都の山本長兵衛が観世流の謡本を出したことから始まります。謡の稽古のための謡本は、もともとは秀吉、家康の奨励によって、能が武家の公式の音楽や演劇となったことから、武士の教養として広まっています。
そして、印刷技術の進歩とともに謡本の出版が盛んになり、町人にも広く謡本が普及していきました。町人のお稽古事として能が流行り、たくさん印刷されるようになり、その後360年にわたり、観世流宗家、金剛流宗家の謡本などが印刷されてきた歴史があります。
つまり、謡本は能楽の長い人気とともにあり、謡本が作られた数は、能をお稽古として習った人口と連動していると言えます。
謡曲の本「謡本(うたいぼん)」の特徴は和綴じと紹介しましたが、一般的に普及している西洋の製法技術の本とは違っていて貴重です。今でも能楽の謡本ではこの和綴じとなっているのが特徴です。謡本には和紙が使われていて、和紙を絹糸で綴る製本技術が昔から伝統的に受け継がれています。針と糸で一冊ずつ綴じて作られていることが一つの特徴です。
また、謡本が生まれた江戸時代当時は、木版印刷で作られていました。木版印刷というのは、版木と呼ばれる木の板に反転した文字を彫って、それを版にして墨を付けて刷る印刷法です。版木を所有していることを「版権」と言い、今でも印刷の版の権利のことは「版権」と言われています。
そして、謡本は能楽の流儀や家によっても異なりますので紹介します。
能楽には、観世流、金春流、宝生流、金剛流、喜多流の五大流派があり、それぞれの流派によって、同じ曲でも謡の詞章、節、舞の型などが異なっています。
例えば、江戸時代から観世流の謡本を印刷している「檜書店」では、1898年(明治31年)には金剛流謡本を印刷し、1940年(昭和15年)には「観世流大成版謡本」の刊行も行っています。
「檜書店」の主な印刷物としては、「観世流宗家謡本・特製一番本」半紙判(164ミリ×227ミリ)の和綴じ本や「金剛流謡本」金剛巌宗家訂正著作の新版の特製一番本、および旧版一番本など合わせて200余点もの謡本の刊行がなされているのが有名です。
また、観世千鳥で知られている観世宗家の謡本(大成版)は、「水谷和本堂」によって製作されているなど、「謡本」を伝統的に作っている所があります。
また、謡本の中には、歴史的価値が高く文化遺産となっている謡本もあります。買取の際の参考として、どんな本に価値が高くつくのかも知っておいてください。
「嵯峨本」と呼ばれる、江戸時代前期に印刷された本などが美術的な価値が高くて有名です。表紙は淡い色合いで動植物などの文様を雲母刷りで施したものです。色変わりの料紙・色糸の綴糸を使っていて、本文は活字で光悦風の美しい書体を溶け込ませています。
また、光悦流の書体で書かれている「光悦謡本」も貴重です。17世紀の江戸時代に作られたもので、表紙も美しく平安時代の唐紙にならって、植物などをデザインした文様を具引紙に雲母で摺り出しています。雲母も溜まりができるぐらいにたっぷりと付けられていて、101冊もあって貴重なものです。
また、「光悦謡本」には、「特製本」「色替り本」「上製本」の3種類があり、「特製本」は最も装幀が美しいものとなっています。雲母刷模様が表紙と本文の料紙全てに刷られていて豪華です。また「色替り本」は表紙が雲母刷模様となり、本文部分には色替り料紙が使われています。「上製本」は表紙に雲母刷模様、本文部分には白絵具の胡粉を引いた具引きが特徴です。
この「光悦謡本」は、野上記念法政大学の「能楽研究所」の蔵書にもあって貴重なものとなっています。1952年(昭和27年)にできた日本で唯一の能楽総合研究機関「能楽研究所」には、約4万点の能楽関連の蔵書など貴重な資料がたくさん揃っています。
また、ここにある「光悦謡本」は、江戸時代の慶長時代に刊行された観世流の謡本で、嵯峨の豪商である「角倉素庵」が製作に関与した「嵯峨本」の一種と言われています。
「嵯峨本」「光悦謡本」の魅力は、豪華な作りが特徴で、芸術品としての価値も高い本です。「光悦謡本」は、身分の高い人や富裕商人、上流武家などのために作られたものと言われ、表紙に雲母模様(きらもよう)を摺り込んだ豪華な装丁が魅力です。豊かな色彩の地につや消しの銀のような雲母模様があり、鶴や蝶、竹、松林に波など日本の文様が見られるものが多くなっていて、唐草など外来の文様を摺ったものもあります。美術品的価値が高い本と言えます。
また、古活字版の技術によって光悦流書体の文字の美しさがきれいに印刷されたことも価値が高くなっています。「光悦謡本」は、「嵯峨本の雄」とも称されている本です。
そして、「光悦謡本」の中でも、「色替り異装本」の「大原御幸」は、表紙だけでなく色替り料紙すべてに雲母模様を摺っています。高位の人への進物などの目的で作られた世界にひとつしかない貴重な本とも言えます。
このように謡曲の本「謡本」は、古い歴史のある本であれば、骨董品的、美術品的な価値があり買取可能です。様々な流派、曲で謡本がたくさん刊行されていますが、古い本には美術的な価値があります。
表紙の文様、和紙、美しい書体、和綴じの技法など、全てが調和した美しさがある本と言えるでしょう。古い謡曲の本「謡本」を持っている場合は、買取依頼も考えてみるといいでしょう。
謡曲の本「謡本」の買取が可能かどうかですが、古書店で、専門書ならば買取をしている所も多くあります。古典芸能・伝統文化の本として買取可能で、古書店で謡本の買取実績があるかどうかをホームページなどで確認してみるといいでしょう。
特に観世流初心謡本などの謡本が多く買取可能となっています。
・浮舟 (観世流特製一番本 大成版)
・水無月祓 (観世流特製一番本 大成版)
・通小町 (観世流特製一番本 大成版)
・大成版 観世流初心謡本 下巻(五番綴謡本)
観世流の謡本は、表紙に流水の文様や千鳥の文様がシンボルとして使われていることが多く、流水の文様を「観世水」、千鳥の文様を「観世千鳥」などと呼んでいます。謡本の表紙と見返しの部分に描かれていますので、特徴の文様を見て確認してみてください。
謡本を多く持っている場合は、できるだけたくさん揃えて買取を依頼する方法がおすすめです。セットで持っているとまとめて買い取ってもらえていいでしょう。
例えば「観世流特製一番本」などは、観世流の大成版謡曲本で和綴じ製本となっていて全210冊です。
各曲ごとに作者・資材・構想・曲趣・節譜解説・舞台鑑賞・辞解・役別・装束附、そのほか演出覚えなどの前附四丁が付いている本です。これらをまとめて売ると高く買い取ってもらえておすすめです。
また謡本は、能のお稽古事のテキストですので、書き込みがあることも多くあるでしょう。謡本に書き込みがあってもあまり関係なく買取されることがありますので、まず見てもらうのがおすすめです。謡曲の本の場合、文体が難しいため、書き込みがあった方がわかりやすいとされることもあります。
「謡本」は、和綴じで表紙も美しく貴重なため、美術品としての価値も高く評価されています。江戸時代からの歴史を持つ貴重な本もあり、セットとして揃っている場合は高く買取が可能な場合もあります。
謡曲の本「謡本」の歴史について詳しく、表紙や製法などの価値を理解してくれる業者に買取を依頼するのがおすすめです。古書や古本の買取業者の中でも、様々な昔の本のジャンルがありますので、同じジャンルの本を買い取っているのかをホームページなどで確認してみるといいでしょう。
自分ではなかなか判断が付かないことも多いため、古本屋などで、古典芸能・伝統文化の本、謡曲の本の買取実績のある専門業者を探してみてください。リサイクルショップや一般の買取業者よりも高く売れますので、例え遠くても買取に実績のある業者に依頼してみるのがおすすめです。歴史的価値があるもの、骨董品的、美術的な価値があるものは高額買取となる可能性があります。
買取実績のある会社ならば、正当な高額の値段で売れる可能性が多くなりますので、ぜひ弊社のような専門業者にお任せ頂ければと思います。
謡曲の本の買取依頼をどこにしようかと悩んでいる場合は、弊社にお気軽にお問い合わせ頂ければ買取可能ですので、ご検討ください。