2024.01.24
人形
2024.01.24
新しい商品が誕生すれば、どうしてもそちらの方に目が向いてしまうものですが「こけし」のような、未だに愛され続けている日本が誇るべき伝統芸能もあります。
こけしとは何か……。
いま、改めてこけしの魅力を再確認していきたいと思います。
目次
かつて、どのお家にも必ずと言っていいほど置かれてあったのが「こけし」なのではないでしょうか。
そんなに出しゃばることもなくさりげなく置かれ、時として次第に忘れ去られてしまうような存在であったのかもしれません。
しかし、それでもこけしはずっとお家の中にあり、静かに家族たちの成長を見守り続けくれていたのです。
こけしは、もともとは子どもたちの玩具だったのですが、いつか、民芸品として、また、アートとして大人たちが受け入れる対象となりました。
また、昭和の時代には、こけしブームも起こり、その頃にこけしをたくさん購入した……という方々も多かったのではないでしょうか。
そして、最近のことを言えば再びこけしブームと言われる時代が到来し、「こけ女」と呼ばれる人たちも登場しています。
「こけし」とは、切り出した木材を使い、ろくろで挽いて作る人形のことを言います。
人形の中でも一番オーソドックスな制作過程と言ってもいいかもしれません。しかし、だからこそこけしには様々な独自性を追い求めることができ、アート性の高いこけしも次々と誕生しています。
作家たちも、「自分ならこうする」という発想がいろいろとわきおこり、こけしに目を輝かせているのではないでしょうか。
こけしは、おおかた江戸時代から続いている工芸品は「伝統こけし」と呼ばれ、さらに、形であったり絵付けに自由性がある「新型こけし」、作家の独創性を感じられる「創作こけし」に区別されています。
そもそもこけしの発祥は、江戸時代の後期、東北地方の温泉地におけるお土産として作られたことだと言われています。
山で木材を挽き、椀であったり、盆を作っていた「木地師(きじし)」と呼ばれる人たちが、湯治場で売るための子どもさん向けのお土産品として作ったことが始まりだと言われています。
もちろん、セルロイドのお人形もなかった時代です。このような素朴なおもちゃが子どもたちにとても喜ばれていたことでしょう。
また、赤い染料を使ったこけしは、魔除けであったり、縁起物としても大変重宝されていたということです。
まさにこけしは、子どもたちの幸せを見守ってくれるようなおもちゃだったのです。
また、こけしが誕生した当初、これと言った共通する名前はなく、木で制作されたから「きでこ」であったり、芥子人形から「こげす」と言われたり、魔除けの人形這子(ほうこ)から「きぼこ」と呼ばれるなど……、それぞれの地域でそれぞれ違う名前がつけられていました。
そして次第に、木を削ってできた人形だから「木削子(こげし)」と表記されたり、江戸時代の男児・女児たちの髪型である芥子坊主(けしぼうす)に似ているため「小芥子(こけし)」と表現されることが多くなります。
こけしの名前のルーツはこのあたりにありそうですが、まだ実際には明確に統一された訳ではありません。 こけしという名前に統一されるようになったのは、1940年(昭和15年)のことであり、そのとき「このままではわかりづらい……」ということで、こけし職人のみなさんが集まって、「こけしという名前にしようじゃないか」ということを決めたのです。
創作こけしは一品製作であり、アート的価値のあるものと定義づけすることができますが、一方「新型こけし」は、量産が可能で市場性のあるこけしのことを言います。
分業生産で量産が可能であり、また、自由な発想をもち形態を工夫することが可能です。
新型こけしも自由な発想で制作することが出来るので、時代の流れをくみ取り、雰囲気にマッチした詩的情緒を誘うような題名がつけられているのが特徴です。
こけしにはいろいろな種類があるから、集めようと思う方々も次第に増えてきます。
同時に買取市場のニーズも高まってきます。
こけしの種類のひとつである「伝統こけし」には、以下のような様々なものがあります。
「津軽系こけし」は、青森県温湯温泉発祥のこけしです。頭は小さめで作られ、髪型はおかっぱ頭、胴体はくびれ、足もとは裾広がりになっているものが多くあります。一本の木から頭と胴体を彫り出すと言った作り付け構造で作られています。
そして津軽系こけしは、胴体に描かれるデザインは、ねぶたのダルマ絵であったり、津軽藩の家紋であったり、また、牡丹の花模様であったりします。表現様式は、様々な型や模様のものがあります。
「南部系こけし」は、岩手県盛岡花巻温泉が発祥のこけしです。
こちらは、頭と胴体が別々に作られています。また、頭はゆるやかに固定され、ぐらぐら微妙に動くことが特徴的です。
胴体の形状は、真ん中が出たものであったり、逆に裾部がくびれたものなど様々あります。
また、南部系こけしは、木肌を生かしたような無彩が主流となり、顔面が描かれていないこけしもあります。胴体もデザインは抑え気味の傾向です。
「木地山系こけし」は、秋田県木地山発祥のこけしです。
こちらは、胴体と頭が一本の木から作られています。木地山系こけしは、大きな前髪のおかっぱ頭に、赤いリボンのような飾りがデザインされています。頭は小さめの感じで、細長い、らっきょう型です。
また、木地山系こけしの胴体は、やや太めでずんどう型、しま模様の着物を着ています。
「鳴子系こけし」は、宮城県鳴子温泉発祥のこけしです。目は上のまぶただけ描かれていて、鼻は丸めが多い傾向です。
また、鳴子系こけしは、御所人形のような前髪があり、胴体には菊であったりカエデ、なでしこなどと言ったものが華やかにデザインされています。
胴体は太め傾向ですが、肩部と裾部がやや張り出しカーブを描く形状となっています。
また、鳴子系こけしは、頭部を胴にはめ込む構造となっていて、首を回すことで「キイキイ……」と音をさせることができます。
「作並系こけし」は、宮城県木作並温泉発祥のこけしです。
目には、上下まぶたが描かれ、お鼻はしたたるしずくのよう。頭頂部は平たく作られ、胴体は細め傾向です。
また、裾がすぼまっている作並系こけしもあり、バランスのことを言えば若干悪いため台座が付いている場合もあります。
胴体のデザインは菊ですが、カニのようでもある「かに菊」であったり、また、赤と黒の花などがあります。
作並系こけしは、胴体は極度に細めとなっていますが、その理由はそもそもこけしが子どもがもって遊ぶ玩具であるからのようです。
「遠刈田系こけし」は、宮城県遠刈田新地、遠刈田温泉発祥のこけしです。
細長くまっすぐな胴体にかなりアンバランスな大きな頭で、差し込み式の構造で付けられています。
また、三日月型の切れ長のお目目は、さも微笑んでいるかのような優しい印象を受けます。
また、遠刈田系こけしの頭部は、赤い放射状の「てがら」と呼ばれている華やかなデザインが描かれています。胴体のデザインは、かさね菊であったり桜、梅と言ったものが多く、伝統こけしの中でもかなり繊細な華やかさを感じられます。
「弥治郎系こけし」は、宮城県白石市弥治郎、鎌先温泉発祥のこけしです。
弥治郎系こけしは、頭頂部は彩豊かなろくろ線のデザインがあり、目は上まぶただけ描かれています。
また、胴体にもろくろ線のデザインが描かれ、襟、裾のある着物の形状になっていることもあります。
「肘折系こけし」は、山形県肘折温泉発祥のこけしです。
上下まぶたが描かれている三日月のお目目に、お口もはっきりと赤をアピールしているこけしです。
髪型は、遠刈田系こけしの流れである赤い放射状の「てがら」or、おかっぱです。
また、胴体は太め傾向の直胴型。全体的に黄色く染め重ね菊を描くことが多くあり、華やかさを感じることができます。
また、肘折系こけしは、頭部をくりそこに抜きあずきを入れて、振ればシャカシャカと音が鳴るものもあります。
「山形系こけし」は、山形県山形市発祥のこけしです。
頭は小さめで、頭頂部は赤の放射状の「てがら」飾りがあります。
また、細めの胴体には桜であったり梅の花であったり、県花である紅花が描かれることもあります。
山形系こけしは、かつて小さめの頭と細い直胴が特徴的でしたが、不安定であるため現在は太めのものも多く作られています。
作家の個性が表現された芸術性の高いこけしが「創作こけし」です。
また、現在日本で制作されている創作こけしの6~7割程度は群馬県で作られています。
創作こけしについて言えば、あえて言えばこれと言ったルールが存在しないことが特徴です。
創作こけしは、形であったり彩色、モチーフなど自由に思いえがいたまま描くことができます。
また、絵付けは、従来のような筆で描くものだけでなく、彫刻したものであったり、電熱線を使用して焼き付ける技法を取り入れた作家、工房もあります。
創作こけしはアーティストたちが様々なこけしを制作することができるため、「これがこけしなの?」というものも中にはあります。
そもそもこけしになんで手や足がないのでしょうか……?
別に手足があってもいいではないか……。
当然創作こけしにはそのようなものも登場してきます。また、映画やアニメの人気キャラクターのこけしも登場します。
「卯三郎こけし」は、創作こけしの産地である群馬県で最大規模の工房をもつ創作こけしです。
ディズニーのキャラクターであったりミッフィー、また、ドラえもん……などなどと言った子どもたちに人気のキャラクターこけしも登場しています。
創作こけしを作るアーティストは様々います。石原日出男、徳丸えつこ、富所ふみを、盛秀太朗などと言ったアーティストの作った創作こけしは、高い買取価格がつく可能性があります。
現在、こけしを所有していて売却査定して欲しい……という方々もいらっしゃることでしょう。
たとえば、一アーティストとして人気が高い棟方志功のものは、箱がなく状態が悪いものであっても、本人のサインありで、20,000円~40,000円あたりの買取が可能です。状態がいいものであれば、100,000円超の買取額も充分期待することができます。
また、盛秀太朗作のこけしは、買取相場はおおかた10,000円~30,000円あたりです。箱付であれば、さらに高額買取も期待することができます。
いかがでしょうか。今回は、こけしの種類、またその魅力について解説しました。
過去を遡れば、温泉地などへ行ってついこけしを買ってしまった……という経験をお持ちの方々も多いことでしょう。
まさに日本人の方々にとって一番なじみ深いものがこけしであったのかもしれません。
こけしには、木のぬくもりもあります。素朴であり、現代をせかせか新しいものを追い求め生きる人たちには、こけしによって癒しのある原点回帰も可能なのではないでしょうか。
現在、再びこけしブームとなっているので、期待以上の買取価格がつく可能性も充分あります。