2024.11.22
作家名
2024.11.22
「ロイ・リキテンスタイン(Roy Lichtenstein)」は、アンディ・ウォーホルと並び、ポップアーティストの双璧をなす人物です。
絵画、彫刻など様々なアートに挑戦し、中でもリキテンスタインの名を世に知らしめたのは、漫画の一コマを拡大してキャンバスに描くシリーズです。
今回は、そんなリキテンスタインのアートを深堀します。
目次
リキテンスタインは、1923年、アメリカのニューヨークに誕生しました。比較的裕福な家庭で育った彼は、ドワイトスクールで学び、その後、オハイオ州立大学美術学部へ進学しています。
リキテンスタインは母親の影響からか、子どものころから音楽をこよなく愛していました。そのこともあり、楽器を演奏しているミュージシャンの姿をよく描くことがありました。
それから戦争が勃発し、リキテンスタインには、陸軍に入隊した経験もあります。
その後、リキテンスタインに大きな影響を与えたとも言われるホイト・L・シャーマン教授とオハイオ州立大学の大学院で出会うことになります。
そのとき、三次元空間で見たものを二次元に置き換える手法を学び、1949年には、芸術学の修士号を取得します。
また、彼には、オハイオ州立大学の講師として仕事をした経験もあります。
1951年、リキテンスタインはニューヨークのカールバッハ・ギャラリーにおいて、はじめての個展を開催します。
当時、リキテンスタインが発表していたものは、キュビズムであったり、抽象表現主義だったりの作品の数々でした。
1958年、リキテンスタインはニューヨーク州立大学オスウィーゴ校で教える仕事をはじめるとともに、抽象表現主義の中に、ミッキーマウスなどと言った漫画のキャラクターのイメージを取り入れる試みに挑戦するようになりました。
さらに、1960年からニュージャージー州のラトガース大学で仕事をはじめ、ここで、ハプニングアートとして知られているアラン・カプローを知り、ポップアートに強い関心を示すようになり、その道を進むことになります。
リキテンスタインの作品である「Look Mickey」は、彼の息子が、ミッキーマウスのコミック本を差し出し、「多分パパはこんなにうまく絵を描くことができないよね……」と言ったことが発端で誕生しました。
そして、1962年には、漫画のイメージを取り入れたはじめての個展が開かれることになります。
そのあたりからは、リキテンスタインは戦争や恋愛などをテーマにし、漫画からインスピレーションを得、様々なアートを誕生させています。
「Look Mickey」だったり「Drowning Girl」によって、リキテンスタインはかなり話題の人物となり、彼が個展を開く以前にコレクターによって買い占められてしまうほどの人気を博しました。
しかし、「Look Mickey」「Drowning Girl」と言った彼を代表するアートの評価は、決して喜ばしいものだけではありませんでした。
リキテンスタインのアートをアートとして認めてしまえば、アートを低落化させてしまうだけではないか……。
リキテンスタインのアートに存在しているのは、空っぽな空虚である。そんなアートを誰が一体求めているのか……。
1964年、アメリカの雑誌「ライフ」はリキテンスタインのことを取り上げ「リキテンスタインはアメリカにおいて史上最悪のアーティストだ」と、かなり強気の批判をぶちまけています。
しかし、リキテンスタイン自身はそんな批判にめげる性格でもなく、また褒められてもそれ程嬉しい顔もせず、もくもくとアート制作に集中していました。
その後のことを言えば、ライフの批判はリキテンスタインの名前を世に知らしめる、ライフの意図と反する結果になります。
リキテンスタインは、彫刻にも関心をもち、「Head of Girl」や「Head with Red Shadow」と言った作品が次々誕生しています。
さらに、1970年には、ロサンゼルス・カウンティ美術館から依頼があり、映画制作にかかわる機会も得ることになります。
さらに、リキテンスタインは、漫画だけをモチーフとして扱うのではなく、果物であったり、花、花瓶などと言った伝統的モチーフも取り入れ、様々なアートにチャレンジしてきました。
そして、「Nudesシリーズ」にもトライ。
リキテンスタインは、そのとき、40歳以上も年が下のエリカ・ウェクスラーと結婚をしています。
リキテンスタインは、そのとき、エリカ・ウェクスラーこそが性的インスピレーションをもたらす人物であると語っています。
国民芸術勲章を受賞
いつの時代でもリキテンスタインを批判的に見る外部がいてしまう一方で、1995年には、彼は国民芸術勲章を受章しています。国民芸術勲章は、最も栄誉ある勲章として知られています。
また同年、日本の「京都賞」の思想・芸術部門も受賞しています。
しかし、国民芸術勲章を授章した2年後、1997年9月29日、ニューヨーク大学医療センターで、肺炎による合併症によって亡くなります。73歳という年齢でした。
リキテンスタインは、ポップアートの巨匠として知られています。
ポップアートとは、まさに、アートを大衆の位置まで引き下ろしたアートのことであり、アートとはもっと威厳の高いものだという認識を持っている方々は、リキテンスタインのアート活動にいい思いはしていないのかもしれません。
しかし、当時のアートにおいてリキテンスタインの登場が無かったとして、どのような道を進んでいったのかといえば、訳のわからない、抽象表現に傾倒してしまうばかりだったことでしょう。果たしてそのようなものだけをアートと呼んでいいものでしょうか。
もっと大衆の方々が受け止めやすいようテーマはわかりやすいものがいいですし、誰もが気軽に好きと言えるようなアートもアートと呼んでいいのではないか、それが「ポップアート」です。
また、ポップアートでは俗っぽく、漫画であったり、スターの肖像画などが絵画であったり、彫刻にも取り入れられています。
=ポップアートは「俗っぽい」と言われても、それは仕方のないことです。
リキテンスタインのアートの特徴は、はっきりとした輪郭線であったり、ベンデイドットが使用されることであったり、多く、「赤」、「青」、「黄」の三原色を使用した油彩で制作していることなどをあげることができます。
どちらかと言えば、リキテンスタインのことは知らないけど、アンディ・ウォーホルは知っているという方々の方が多いのかもしれません。
しかし、リキテンスタインは、アンディ・ウォーホルのアートの道の変更を余儀なくさせたほどの人物なのです。
ある時期、アンディ・ウォーホルは、「バッドマン」「スーパーマン」をモチーフとしてアートを描き続けていました。そのとき、リキテンスタインもアメリカンコミックをモチーフとして、魅力的なアートを制作していました。
そして、ドットを使用したリキテンスタインの独自表現に対して、アンディ・ウォーホルがとても悔しがっていた……というエピソードが残されています。
アンディ・ウォーホルはその後、アメリカンコミックをモチーフとすることを辞めてしまったと言います。
しかし、アンディ・ウォーホルはそのとき転身したことをキッカケとして、あの「キャンベルスープ缶」を誕生させています。
リキテンスタインの作品「Whaam!」は、DSコミックスの「All-American Men of War」からのインスピレーションを得て創造されたアートです。
戦闘機が戦闘機を追撃して、アートの中には、「Whaam!」という文字が。
文字も絵と同様にアートチックで、それは、大衆的漫画そのもののようです。
これではやはり、どこからかこんなものをアートと言っていいものかと批判がきそうです。
しかし、みなさんがリキテンスタインのアートを目の当たりにして、やわらかい顔をしているのではないでしょうか。
アートに対して、そもそもなんでそんな難しい顔をして向き合わなければならないのか……。
もっとやわらかい顔をして戦争を見れば、戦争の武器なんて、まるで子どもが遊ぶようなおもちゃのように見えてしまうでしょう。
戦争や武器なんてものは大人が真剣に向き合うものではなく、子どものおもちゃの世界の中だけに任せておけばいいのです。
リキテンスタインの代表作「Look Mickey」では、釣り針が自身に引っかかってしまっていることに気づかないで「見てよ、ミッキー!」と語りかけるドナルドと、その光景に笑いをおさえているミッキーの様子が描かれています。
リキテンスタインは、誰しもに与えるインパクトと、表現力のすごさ両方をあわせ持った漫画の世界に魅了されたのです。
漫画は崇高なアートです。しかし、現状では漫画をアートと呼ぶ機会はなかなかないのかもしれません。それは何故なのでしょうか。それは、あまりにも漫画が連続性をもちハイスピードで通過していってしまうため、アートとして判断する機会をもたせてくれないせいかもしれません。
一方で、リキテンスタインの方は漫画のワンシーンを切り取り、言葉を画と対等に並べ登場させ、わかりやすいシンプルなカラーでそこに停止させています。「これはアートかも……」と考える時間を私達に与えてくれているのもリキテンスタインの方です。
「Drowning girl」、こちらもリキテンスタインの代表的アートです。
Drowning girlは、溺れる少女の画です。
恋愛漫画をモチーフにしたシリーズのうちのひとつで、溺れる少女が悲劇のヒロインとしてメロドラマ風に描かれています。
そこに哲学や思想が存在しているという感じでもなく、テレビ用の安っぽいシナリオが綴られているかのようです。
現在、リキテンスタインのアートを所有していて、売却査定して欲しいという方々もいらっしゃることでしょう。
日本国内に流通しているアート作品は、アンディ・ウォーホルと同様に、ロイ・リキテンスタインも版画(シルクスクリーン・リトグラフ・オフセットなど)が主となります。
原画アートは、世界のメインオークションで驚くほどの金額で落札されることもあり、版画作品の中でも高額で推移しています。
売却査定額はアートの人気であったり、シルクスクリーン、オフセットと言った技法などによって判断されます。
リキテンスタインのアートは、数十万円台から数百万円台まで様々な買取額が提示され、中には1000万円以上の売却査定額の版画作品もあります。
いかがでしたでしょうか。今回は、リキテンスタインのアートについて解説しました。
リキテンスタインは、アンディ・ウォーホルと並ぶポップアートの巨匠です。
ポップアートとは、アートをもっとわかりやすく大衆化したアートのことです。子どもがパっと見ただけで、「このアート素敵!」とすぐに思ってくれるようなアートです。
そんなアートをお部屋に1枚飾ることで、お部屋には一つ大きな窓が作られたかのように、涼しい異質の風が吹き込んでくることでしょう。
そのような意味で、アートって本当に偉大です。
どのアーティストの作品から収集したらいいかわからない……という方々は、まずはリキテンスタインからはじめてみてはいかがでしょうか。