2023.11.13

五木田智央(ごきたともお)とは、どんなアーティスト?略歴や作風、作品の特徴や現在の買取価格について解説

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「五木田智央」というアーティストについてご存じでしょうか。その代表作品は、白と黒のモノクロームの色彩、メタリックなグラデーションで描かれており、顔は描かず抽象的なイメージで構成されている人物像が特徴的です。五木田智央は、1990年代ごろから音楽やサブカルチャーの影響を受けたドローイング作品で注目を集め、その作品は、先にアメリカで人気を得て、それから国内でも人気に火がつきました。

ここでは、世界的アーティスト、五木田智央について解説していきます。

略歴

 五木田智央は、1969年に東京都で生まれました。子供のころから絵を描くのが得意だった五木田智央は、小学生のころプロレスが好きで、プロレスラーのイラストを描いて投稿しており、その絵がプロレスの試合で売られるパンフレットの投稿欄に頻繁に掲載されるようになりました。それをきっかけにあらゆる雑誌に絵を投稿するようになりました。中学、高校時代には、友人のバンドのカセットテープのジャケットや、芝居やパントマイムの公演ポスターなどをデザインしたり、描いたりしていました。20歳ぐらいの頃からグラフィックデザインの仕事を始め、その後、イラストレーターとして雑誌や商業デザインの分野での活動を経て、のちに画家に転身しました。イラストレーターから画家へ転向した理由として、イラストレーターはクライアントの要求や要望に応えなければならず、いろいろな条件や指定があり、それらのしがらみや制約が嫌になったからだと語っています。

 国内では「タカ・イシイギャラリー」、海外では「Blum&Poe」(アメリカ)に所属しています。

 

作風

 五木田智央を象徴する作品と言えば、顔が描かれていない抽象的なイメージのモノクロ人物像作品で、それはシュルレアリスム(超現実主義)の手法を想起させる作品でもあります。しかし、五木田智央の作風は、幼少期から触れてきた数多くのアーティストの作品や、自身の経験などあらゆる要素が融合され、組み合わさって、昇華されて誕生したものです。子供の頃の五木田智央は、雑誌やレコードなどから、横尾忠則やアンディウォーホルの作品に触れ、プロレスも好きでした。中学生の頃にはフランチェスコ・クレメンテや大竹伸朗、ジュリアン・シュナーベルといったニューペインティング(新表現主義)に魅了されていきました。さらにイラストレーターとして、グラフィックデザインの仕事をする中で手がけたコマーシャル・デザインや商業写真、イラストレーションやタイポグラフィーなど、ありとあらゆる要素が、五木田智央の作品には取り込まれているのです。

有名アーティストへの階段

 五木田智央はイラストレーター時代を経て、極めて短期間で世界的有名アーティストとしてその名を知られるようになった、異色の経歴を持つ画家です。ここで、五木田智央が短期間で有名アーティストとなった経緯を見ていきます。

イラストレーター時代

 五木田智央は1998年、19歳のとき、音楽と映画関連の雑誌「BARFOUT!」の33号で描いた歌手UAの顔のイラストが表紙に採用され、ファッションや音楽業界から注目を集めました。

作品集の出版

 2000年、自身初の作品集「ランジェリー・レスリング」を出版します。これは、出版の前年、およそ1か月間のメキシコ旅行から帰国し、書き上げた約1000点にものぼるモノクロのドローイング作品の中から、選りすぐりの300点がまとめられた作品集です。そして、この作品集が五木田智央の海外での活動が広がるきっかけとなりました。

海外からの出品オファー

 2005年、この作品集を見たテイラー・マッキンメンズというアーティストから、ニューヨークのギャラリーでのグループ展へのオファーを受け、その展覧会で、五木田智央の作品が高く評価されました。テイラー・マッキンメンズは、わざわざ五木田智央をグループ点に誘うために、五木田智央が制作活動を行っていた日本のアトリエまで来たというエピソードから、五木田智央の作品が彼にどれほどのインパクトを与えたのかは想像に難くありません。

 五木田智央はどんなに小さなギャラリーであっても、自分の作品を展示できるということが嬉しく、自費で渡米したと言います。当時の作品は約1万円~数万円で、旅費などの経費を考えると赤字だったものの、作品は飛ぶように売れ、多くのギャラリストから誘いを受け、数日後にはニューヨークタイムズに五木田智央の写真が掲載されたほどでした。あっという間に有名アーティストとしての道が開けたのです。

 短期間でこれほどの成功を収めたアーティストは非常に珍しく、それは五木田智央の作品がそれほど人々を魅了する力を持っていたことを意味するのではないでしょうか。

伝説のギャラリスト、メアリー・ブーンからのオファー

 

 その後、アメリカやイタリア、ベルギーなどで個展やグループ展に出品し、日本ではタカ・イシイギャラリーに所属することになります。そんな中、伝説のギャラリストとして知られるメアリー・ブーンから直々に個展の開催オファーを受けました。彼女は日本でも人気のあるバスキアやKAWSなど、現代アーティストを発掘したギャラリストとしてその名を知られています。そんな彼女が五木田智央の作品を目にしたのは、シンプルでポップな色使いと、「××」の目をしたキャラクターで人気の現代アーティストKAWSのアトリエを訪れたときだそうです。壁に飾ってあった五木田智央1枚の絵に注目し、そこで、初めて彼女は五木田智央という日本人アーティストの存在を知り、五木田本人に直接連絡してきたのだそうです。そして、2014年、彼女のギャラリーで初めての個展を開催し、その2年後には2度目の個展も開催されました。そして、2度目の個展の際には、オープニング前、五木田智央が現地のギャラリーに到着する前に、出品のため送った12点の作品全てが完売していたというから、驚きです。

 メアリー・ブーンのギャラリーで活動するということは、アーティストにとって将来とその成功を約束されたと言っても過言ではなく、そんな有名ギャラリストに発掘されたことも五木田智央が短期間で成功の階段を上るきっかけとなったのです。しかし、五木田智央の才能なくして、有名ギャラリストの目に止まるはずはなく、両者の出会いはまるで必然的に二つの歯車がぴったりと出会ったようなものだったのではないでしょうか。

 なお、残念なことに、メアリー・ブーンには2019年に巨額の脱税による2年6か月の懲役(実刑)が科されていますが、その後2020年に釈放されました。 

作品の取引価格

 

SBIアートオークション

 2020年、「Moving Target」というキャンバスにアクリルで描かれた、作品は予想落札価格200万円~300万円に対し、345万円で落札されました。この作品は、2014年にDIC川村記念美術館にて開催された展覧会「THE GREAT CIRCUS」に出品された作品で、その展覧会のカタログにも掲載されている作品です。同じ回のオークションにて、「天国はオコリンボ」という作品は、予想落札価格に近い約72万円で落札されました。

フィリップス オークション

 

 2021年に香港で出品された「Final Confrontation」というキャンバスにアクリルガッシュで描かれた、モノクロの五木田智央を象徴するような作品は約181cm×約227cmという大きな作品で、252万香港ドルで落札されました。これは現在のレート換算で4,500万円を超える破格の落札価格です。

 

 2020年にニューヨークで出品された「Hangover」というキャンバスにアクリルガッシュで2015年に描かれた作品も、予想落札価格範囲内の約25万米ドル、現在のレートで3500万円以上という高値で落札されました。この作品も約227cm×約181cmと大型で、顔のない女性が椅子に座っている五木田智央を象徴するような作品です。

 2022年に同じくニューヨークで開催されたオークションでは「Mystic Revelation」というリネンにアクリルガッシュで描かれた約162cm×約162cmの大きな作品は予想落札価格を上回る約21万米ドルで落札されました。こちらも、現在のレートで2900万円を超える価格です。

シルクスクリーン・ポスターなど 

 このように、五木田智央の作品は、非常に人気があり、一般の人々が容易に手に入れることができるとは言い難いものです。

 しかし、ギャラリーショップやイベント、オンラインのアートショップなどでは、五木田智央のシルクスクリーンや、作品ポスターを購入することができます。シルクスクリーンであれば30万円~40万円、リトグラフであれば3万円~5万円、ポスターであれば数万円という価格帯で購入が可能です。こちらなら、一般の人々でもより気軽に五木田智央の作品を飾ったり、鑑賞したりすることができるのではないでしょうか。

 また、五木田智央の作品はファッションブランド「トーガ(TOGA)」のコレクションでそのアーカイブ作品が起用されたり、ユニクロとコラボしたTシャツが発売されたりと、私たちの身近なところでも目にする機会はあるかもしれません。

販売・売却・査定

 

 五木田智央の作品は、日本のみならず、海外のオークションでも頻繁に出品されているようです。また、その作品そのものだけでなく、作品集もプレミアがついた価格で販売されています。前出の五木田智央の初めての作品集「ランジェリーレスリング」は当初、1,600円程度で発売されましたが、今では希少本となっており、手に入れることも難しくなっています。価格も当時の何倍にも跳ね上がっています。

 しがたって、五木田智央の作品の売却を検討している場合には、その価値を慎重に見定め、複数の業者に査定を依頼することが望ましいでしょう。また、今後もその価値は上昇していく可能性があるので、購入を検討している場合も、適切な価格を知り、好きな作品にめぐり会った際には、一期一会の機会だと考えたほうがよいかもしれません。



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