2024.01.19
象牙
2024.01.19
象牙の置物は、現在買取してもらおうと思えば、かなり高い価格になることがあります。それは象牙の置物を高い価格でも買いたいと思っている方々が大勢いるからです。
大勢の方々が象牙の置物に、この上ない魅力を感じています。今回、買取価値の高い象牙の置物の魅力について解説します。
この記事では、
について知ることができます。
ぜひ一読ください。
目次
そもそも「象牙」とは、象だけから取れる、象の口から突き出した長い牙のことです。
象牙には、以下のような特徴があります。
「切歯」は歯列の一番前にあって、本来食べ物を噛み切り、口へと取り込む役目があります。また「犬歯」は切歯の隣にあり、食べ物に食いついて切り裂く役目を持っています。多く哺乳類の牙と呼ばれる長く尖っている歯は犬歯が発達したものだと言われています。
象の場合、牙は犬歯なのか切歯なのかと言えば、切歯となります。象は牙を使って、木の皮を削ったり、捕食のため土を掘ったりします。この土は象たちにとって、ミネラルが含まれた大事な食事です。また、象にとって牙は戦う武器ともなりうるものです。
また、象の牙は歯であるため、オスの象にもメスの象にも同じように牙があります。
ただし、アジア象の場合、牙がもともと小さい特徴があり、メスによっては牙のない象もいます。
また、最近このような研究の報告がありました。
アフリカ、モザンビークの内戦(1977年~1992年)において、それぞれ兵士たちが戦うための費用を抽出するために象牙を必要とし、アフリカゾウを大量に虐殺していたのです。現在のゴロンゴーザ国立公園において、戦争のせいでおおよそ9割近くのアフリカゾウが殺されてしまいました。
個体数が急激に減少し、その後、牙のないメスの割合が1972年には18.5%だったものから2000年には50.9%へと3倍にも増えていたのです。牙の存在しないメスの象は、牙をもつメスの象よりも生存率は5倍以上も高いと推測することができます。
どうやらメスの象は、牙を持たないことで長く生存できると判断したようです。つまり、牙のない象たちは乱獲の対象にならないことが、遺伝子レベルで組み込まれたのです。
象の牙は、放置しておけばいつまでも伸び続けます。しかし、象たちは日々、樹木を削ったり、土を掘ったりし働いているため、牙も同様にして削られていき、長すぎてしまうことが防がれているようです。
そうでなければ、象の牙が自分自身を傷つけてしまうという事態も起きてしまうことでしょう。牙は、摩耗することで、長さがいい感じで調節されているのです。
象の歯は、6回生え替わると言われています。
象牙に関して問題となっているのは、象牙が乱獲されていることです。象牙を奪われた象は、その後どう生きていけばいいのでしょうか。そんな疑問もわくことでしょう。(実際には乱獲され、無残に象たちは殺されているのです)
奪われた象牙も再び生えてくれるものであれば、無事生きることができるのではないかという考えをもつ方々もいることでしょう。(無駄な考えなのかもしれませんが……)
象の場合、切歯以外、上下と左右に一本ずつの臼歯しか生えていないのですが、これらは水平交換し、6回も生え替わっているのです。
しかし、残念ながら象牙は生え変わることはありません。人間が象牙を乱獲してしまう問題まで対応できる遺伝子メカニズムはなかったようです。
象牙は、材質が美しく加工も容易であるため古来から工芸品の素材として珍重されていました。そして、それゆえ残念ながら象にとっての乱獲の悲劇も引き起こされてしまったのです。
象牙の置物には、以下のような魅力があります。
象牙の置物には、色味の魅力があります。象牙の色は、ただの白ではありません。真っ白というよりは、柔らかい、ちょっとくすんだ感じの薄いベージュのような色合いでそのカラーは、アイボリーと呼ばれます。
また、象牙は昔から加工のしやすさから、印鑑など用途で使用されてきました。象牙で実印を作る方々も多くいます。それは象牙の素材が、大事に扱わなければならない実印と合致したものだからでしょう。
象牙の落ち着いた温かみのある色合いは、高級感を演出するカラーとして様々な場面で用いられています。
象牙の置物には、既に多くの人たちが美術工芸品として用いた歴史があります。象牙の置物を飾れば、タイムスリップしたかのように歴史の重さに酔いしれることができるのではないでしょうか。
象牙の置物には、なんと3万年もの歴史があるとも言われています。古くは旧約聖書であったり、仏典の中にも象牙細工、象牙師の記述が残っています。また、イギリス大英博物館には、3600年前のモーゼが活躍したころの象牙を散りばめた2本の短刀であったり、象牙作りの椅子が所蔵されています。
さらに、歴史的書物には、象牙が飾られたギリシア皇帝の屋蓋のことであったり、イタリア・エルトリア王朝の象牙の王座、また、ローマ高官の象牙椅子などと言った象牙を貴重なものとして扱った記述も多数見つけることができます。
そして、日本では、8世紀の奈良時代に中国から渡った紅牙揆婁尺(こうげばちるしゃく)が正倉院御物として収蔵されています。
象牙を彫刻することを「牙彫(げちょう)」といいます。歴史的には、江戸時代に広まった三味線とともに、象牙の撥(ばち)のニーズが高まって、撥に装飾をすることが牙彫師のはじまりだと言われています。
また、大坂の彫師である吉村周山が中国製の象牙細工を摸製し、根付の象牙彫が行われてきました。その後、象牙細工は一つの産業となります。
根付とは、印籠であったり、煙草入などを腰に提げるときに紐の端につけた留め具のことを言います。根付はその時代に生きた人たちにとって格好なアクセサリーだったのですが、そこに牙彫の需要が高くありました。そのころの根付には、巧みな彫刻の技術によって人物、動物などを精彩に彫りだしたモノが数多く見られます。
しかし、明治時代以降は、洋装の普及もあって根付自体が使われなくなっていき、その後、牙彫の置物に目が向けられることになります。象牙の置物は、来日した欧米人たちを中心とし人気を博し、明治前期には牙彫置物が輸出工芸の花形へと躍り出ることになります。
ある時代では、すべての彫刻物が象牙によって真っ白になった……と言われるほど、象牙の需要が高まっていたのです。
一本物の象牙の置物を飾りたいという方々もいらっしゃるでしょう。一方では、牙彫の置物を求めている方々もいます。象牙には、単に一本物としての魅力だけでなく、加工できる魅力があります。牙彫によって様々な形となり、それだけ私達の想像力も掻き立てられていくことになります。
そして、牙彫として人気なのが「安藤緑山」の象牙の置物です。
大正から昭和初期にかけては、後世に残すことができるほどの優れた名品がいくつも誕生しています。その中でも、安藤緑山のものは超絶技巧と評価され、まさにそこには彼でしかなしうることができない匠の技があります。
安藤緑山の作品「竹の子、梅」は、細かな部分まで本物の竹の子と間違えてしまうくらいのリアルさで作られ、まるでフォトグラフかのような作品です。
ほとんど象牙の置物とは思うことができないくらいまでに加工されているのですが、それは正真正銘ホンモノの象牙でできた置物です。「竹の子、梅」からは、象牙ならではのあたたかみも感じられたりします。
安藤緑山の象牙の置物の魅力は、リアルさが表現されていることです。象牙のあたたかみにプラスして、まるで命の息吹が聞こえてきそうなみずみずしさを感じ取ることができます。
象牙とは、これほどまで薄く、細かく彫ることができ、本物と見紛うほどまでに繊細な色付けができるものだったとは、現代人も驚きではないでしょうか。それは、まさに安藤緑山の創造力あっての技です。現代人も安藤緑山に学び、創造することを怠らない、常に研ぎ澄まされた精神をもち日々を過ごして欲しいものです。
「南國珍果」は、リアルなバナナとパインです。
象牙の置物は、一本物がいいと主張されていた方々も、きっと度肝を抜かされてしまうことでしょう。
安藤緑山(あんどうろくざん 1885〜1955年)という人物に関して言えば、牙彫の作家として大正から昭和初期の時代に活動をしていたことと、野菜であったり、果物などごくごく身近なモノをモチーフとし、50点程度の象牙の置物を残していることあたりまでがわかっています。しかし、それ以外の安藤緑山の生涯であったり、どのような人柄であるのかなどと言ったものはほとんど不明です。
安藤緑山の生涯において、弟子もとらなかったため伝承されることもなく、どのようにこれらの作品が作成されたのか技法も詳しいことはわかっていません。
ただし、最近になってやっと最新の科学技術によってちょっとずつわかってきたことがあります。
現在、X線検査、顕微鏡での細部までの分析により、安藤緑山の作品は、大きめのモノはネジなどで接合し作られていること、金属を主成分とする無機系着色料を使用していることなどが明らかにされています。
安藤緑山が生きていた時代、もてはやされていた牙彫は、やや下火になっていました。象牙の魅力と言えば、白地の色合いだったのです。よって当時、安藤緑山はあまりいい評価も得ることができませんでした……。
安藤緑山は、象牙に着色することで色が滲んできて独特の味わいが出てくるという独自ルールに従い、着色を施してきました。そこには、繊細でクオリティーの高い技巧が備わっています。需要も減少し、象牙彫刻師も高齢化も進んだ現在、ここにきてやっと本来の安藤緑山の価値が見直されたと言ってもいいでしょう。
いかがでしょうか。今回は、買取価値の高い象牙の置物について解説しました。
象牙は、象の牙です。かつて象牙は乱獲されて象の数が減少してしまったという悲劇があります。象牙はとても希少性があるものであり、それゆえ高い買取額がつけられています。
象牙の置物は、一本物がいいという方々も多いのかもしれませんが、牙彫にも魅力があります。安藤緑山の象牙の置物にも現在高い買取額がつけられてます。
そのような象牙の置物を所有している方々は、ぜひ一度鑑定・査定してもらってみてはいかがでしょうか。