2024.01.24
刀剣
2024.01.24
日本刀を売却する前に、どの程度の買取価値があるのか知りたいと思っている方々も多いことでしょう。
日本刀に売却価値が存在しているのは、「銘」のある日本刀です。
では、なぜ銘のある日本刀に高い売却価値があるのでしょうか。
今回は、
・どのような日本刀に売却価値がある?
・名が知られた刀工の日本刀の売却価値が高い理由
・無銘の日本刀は売却価値が下がる?
というテーマに分けて、それぞれについて詳しく解説します。
ぜひ一読ください。
目次
日本刀とひとことで言うものの、様々な種類があります。
日本刀は大別すると、「太刀」と「刀」に分けることができます。太刀と刀の大きな違いは、時代です。
日本の刀剣は中国から伝えられた両刃のまっすぐな刀剣からスタートしているのですが、時代は経過し、その後日本独自の形態へと進化することになります。
日本刀の様式の特徴と言えば、片刃の曲刀です。その片刃曲刀が登場したのは平安時代になってからのことで、このような時代に「太刀」が誕生しています。
太刀は、その時代に適合し、長さであったり、幅、反りなどが臨機応変に変化し発展してきました。南北朝時代が終わり室町時代あたりになれば、武士の戦闘スタイルにも変化が起こります。そのときには今まで存在していた太刀では不便だと感じるようになり、当時の戦闘スタイルにマッチした形として、室町時代ごろに登場したモノが「刀」なのです。
このように日本刀は、様々な時代を経緯し、それぞれの時代のニーズに合わせ変化し続けました。
日本刀の売却価値のことを言えば、すべての日本刀に対して高い買取価値があるということではなく、物によるところの大きい、いわゆるピンキリです。
骨董価値が見いだされた日本刀に対しては、おおかた高い買取価値があると言ってもいいでしょう。敢えてその中でも高い売却価値が期待できるのは、「銘(めい)」が存在する刀工によってつくられている日本刀です。
「銘(めい)」とは、日本刀を作った人物がそのモノに自分自身の名前などを記したモノのことを言います。銘は、 701年(大宝元年)制定された大宝律令で規定され、平安時代末から一般化しました。
一見同じように見える日本刀であったとしても、銘が存在している日本刀と、銘のない日本刀では、かなり売却価格に違いがあります。例えば、「備前長船兼光(びぜんおさふねかねみつ)」の銘のある日本刀であったり、「菊一文字(きくいちもんじ)」と言った名が知られている刀工によって作られた日本刀であれば、より高い売却価値を期待することができます。
「備前長船兼光(びぜんおさふねかねみつ)」は、備前長船派(びぜんおさふねは)家筋の3代目である景光の子どもだと伝えられています。鎌倉時代後期~南北朝時代中期頃までの期間、作刀をしていたと伝えられています。
また、備前長船兼光を称する刀工は四工存在しています。一般的に言って、南北朝時代におおいに活躍していた刀工を指していることが多く、一方で室町時代の兼光の日本刀はほとんど見ることができません。
初期の作柄は、片落ち互の目(かたおちぐのめ)、丁子刃、切先の刃文は、湾(のた)れ、小丸上がりの三作帽子(さんさくぼうし)となります。姿は、鎌倉末期の太刀で身幅尋常(みはばじんじょう・身幅が特に広いとか狭いとは感じない程度)です。
また、南北朝時代の延文あたりから作風も変化し、大湾れに互の目乱れとなり、身幅が広めの3尺を越える大太刀が登場します。切先の刃文は、兼光帽子へと変化しています。
「菊一文字(きくいちもんじ)」は、後鳥羽院が、備前一文字派の祖である則宗であったり、助宗に打たせた日本刀のことを言います。「菊一文字」は、「菊一文字則宗」などとも呼ばれ、一文字派の刀工が「菊紋」を入れた日本刀のことを言います。
一文字則宗であったり、則宗の子供である助宗の打つ太刀に対し、特別、菊紋を切ることを許され、銘は菊紋だけで一の字は切っていません。
菊紋を切った太刀は、則宗銘のモノよりも、鎺(はばき)もとから丁字乱れに玉刃を焼き、沸え(にえ)もこまやかで、地鉄も青く冴えている点から出来映えのいい傑作品ということができます。
ただ、銘があれば高い売却価値がつくということでもありません。期待満々で買取業者に売却査定を依頼するものの、「買取しません……」と言われてしまうようなことがあるかもしれません。
それは、一言に「備前長船兼光(びぜんおさふねかねみつ)」の日本刀と言っても、それがニセモノである、また、打たれた時代や人物が違うと鑑定されてしまうこともあるかもしれないからです。
また、無銘の日本刀であったとしても、刀工によって作られた価値ある日本刀だったということもあるため、まだまだあきらめるのは早いです。
名が知られた刀工の日本刀の売却価値が高い理由は、そのままそれが優れた日本刀であるからです。
一般に、刀を「打つ」と言うように、日本刀を作る場合、熱した鋼を鎚で打ち延ばし造形する鍛造という技術からスタートします。
日本刀を一生懸命、丹精込めて作る専門職人たちのことを刀工、または、刀匠と呼びます。刀工たちは、日本刀を作るとき、白装束をまとい作ります。それは、日本刀を作ることが神聖な儀式として認識されているからです。
折れない、曲がらない、スパっと切れるなどと言った要素が、日本刀にイメージする理想なのかもしれません。そのような機能性を日本刀にもたせるために、「硬」と「軟」の鉄を組み合わせたメカニズムが考案されたのです。
鋼などと言った硬度のある鉄素材に硬さはありますが、柔軟性に劣る部分があります。一方で軟鉄は粘りがあるのですが、曲がりやすいです。それらそれぞれのデメリットを補うことに成功したものが日本刀なのです。
日本刀は、軟らかい鉄を芯にし、硬い鉄をくるむようにする高度な技術によって作られています。そこに高い技術が存在しているからこそ、剛柔双方の特性をあわせ持つことができたのです!
さらに、硬軟それぞれの鉄素材は「折り返し鍛錬」という技法で作られていきます。
日本刀は、鉄を熱すると同時に叩き延ばしていき、折り返して、また叩く作業を繰り返していきます。それら作業は、鉄素材に紛れ込む不純物を取り除くことにあり、また、素材の組成を均等にするために行われているのです。
この熟練した技術によって、鉄は微細な層状の模様を成し、日本刀の地肌には特徴的な景色があらわれてきます。
刀の姿になった素材は、焼き入れという工程で「硬さ」と「波紋」を与えられます。
刀身を熱し、急速に冷却することで硬さを高めていきます。また、あらかじめ刀身に泥を使いデザインをつけることで意図して焼きムラを作り、美的に優れた波紋をあしらうことがあります。
ヤスリであったり砥石を使用し微調整を行い、刀身に拵えと呼ばれる「鞘(さや)」であったり、「柄(つか)」、「鍔(つば)」、またその他の刀装具が装着され、完璧な日本刀が完成します。
日本刀には、このような気が遠くなるような複雑な工程作業があります。果たして、適当に始めた職人に、レベルの高い日本刀を作ることができるのかと言えば、絶対に無理でしょう。
名が知られている刀工とは、鍛錬された技術をもった職人のことであり、まさにそのような人たちから作り出された日本刀だからこそ、クオリティーが保証されているのです。高い売却価格がついたとしてもそれは至極当然のことで、まさしく日本の職人達が伝統的に洗練し上げた匠の技術なのです。
日本刀を買取して欲しいと思えば、それぞれのお店で鑑定・査定してもらうことになります。
鑑定・査定の基準もあらかじめ知っておくといいでしょう。
日本刀には、古来より刀剣研究家であったり鑑定家たちの評価で作り出された番付があり、「大業物」や「業物」、「最上作」、「上々作」、「上作等」に分けることができ、つけられる売却価値もそのルールに従っています。
それを分類するためにも、誰の作品であるかが大事なポイントとなるため、おのずと銘のない日本刀は価値が下がってしまうことに繋がるわけですね。
ただし、鑑定士は様々な視点から日本刀を鑑定するため、そのような銘のない日本刀が買取されない訳ではありません。
正しい価値を知るためにも、お手持ちも日本刀を専門の業者に鑑定してもらうことは非常に重要です。
刃切れのある日本刀は、かなり評価が下がり、買取してもらうことができないことがあります。刃切れとは、日本刀を作る工程で焼き入れの際、刃に割れが入ってしまう状態を言います。
当然と言っていいのかもしれませんが、古い時代に作られた日本刀の方が売却価値は高くなる傾向にあります。
敢えて言えば、昭和の戦争の最中に作られた、軍刀などの売却価値は相当低いと考えてください。
刃紋には大きく分けて、「乱れ刃」と「直刃」があります。人気が高いのは乱れ刃の日本刀で、比較して高値になる傾向があります。
元から先に至るまで均等の出来上がりが理想であり、作る工程でムラができたりすればそれだけ価値は下がります。
鍛え傷であったり、ヒケ傷などの傷も日本刀の美術的価値を下げる要因となります。
傷の大きさと、どの部分にあるかで売却価値は違ってきますが、その中でも刃中にある傷は相当売却価値を下げます。次に価値を下げるのは平地にある傷、次は、鎬(しのぎ)にある傷です。
日本刀は、折返し鍛錬で造られるものです。その工程の流れで鍛接が充分でない表面や内部に傷となり現れてきます。表面に出現した傷は、研げば取れるものもありますが、更に傷を広げてしまうような場合もあります。
日本刀は、キレイに研ぎ上げられていても、さかのぼれば何度も何度も研ぐことを繰り返し、刀身が痩せてしまい、身幅や重ねが細く薄くなっている状態のものもあります。また、平地(ひらじ)に芯鉄が露出しているものもあり、これでは、やはり日本刀の美的価値は下がってしまうことでしょう。
刃こぼれであったり錆びも売却価値を下げる要因です。
再び美術品としての価値を戻すのには研ぎを行うことが必要です。しかし、簡単に言うものの研ぎの費用は相当高額です。また、錆びの中でも黒色の錆は深くタチが悪いため、研ぎではなかなか除去できないことがあります。
いかがでしたでしょうか。今回は、日本刀の売却価値について解説しました。
日本刀には、複雑な工程が存在しているため、生半可な気持ちで日本刀をつくることは到底不可能です。そのような日本刀は、すぐに鑑定士に見破られてしまうことでしょう。だからこそ、古来より綺麗な状態で現存する日本刀は、それだけで大きく価値を跳ね上げるのです。
そのような日本刀の中でも、とりわけ売却価値がおのずと高くなるものが銘のある日本刀です。
ただし、銘のない日本刀が買取されないということでもありませんので、まずは売却査定してもらうことからはじめてみてはいかがでしょうか。