2024.11.22
作家名
2024.11.22
目次
「KYNE(キネ)」というアーティストについてご存じでしょうか。物憂げで、クールな女性をモチーフにした作品を描くアーティストで、その作品は雑誌の表紙やCDのジャケットを飾ったり、アパレルブランドとのコラボ商品が発売されたりしているため、KYNEというアーティストを知らなくても、彼の作品を知らず知らずのうちに目にしたことがあるかもしれません。また、KYNEの作品は注目を集めていて、その取引価格も上昇傾向にあります。ここでは、そんな注目のアーティストKYNEについて解説していきます。
KYNEは自身の素性をあまり公開していませんが、公式ホームページや様々な場面で行われたインタビュー内容から、その経歴を垣間見ることができます。
KYNEは1988年に福岡県で生まれました。現在も福岡を拠点に活動をしています。高校時代からデッサン、油彩、彫刻、陶芸、染色、デザインなど美術を一通り学んでいる中で、現在の象徴的モチーフとなる人物画を描くことに興味を持ち始めます。また、同時に、自分が油彩には向いていないということにも気づかされたと語っています。さらに、ストリートアートの面白さにも魅了されていきました。
大学時代は、それまで勉強してこなかった日本画を専攻すると同時に、グラフィティ作品の制作にも取り組んでおり、18歳ごろからスプレー缶で写実的な人物画を描くようになりました。そうしたグラフィティの表現の一つとして、ステッカーやポスターを街中に貼る文化があり、KYNE自身、自分の作風をもっと街中で見せられたらいいなと考えていたと語っていますが、福岡では、KYNEが描いた「KYNE girl」と呼ばれるステッカーやグラフィックが街中で見かけられます。
大学卒業後は、日本画ではなく、アクリルで描くようになりました。しかし、写実的でリアルな人物画を描くより、日本画を学ぶ中で培った線描で表現した方が、自分独自の作品になるのでは、と考えたことが現在の作風につながっているそうです。
KYNEの活動拠点は福岡です。2017年に同じく福岡の人気イラストレーターNONCHELEEE(ノンチェリー)と共同で、福岡にスタジオ兼ショップ「ON AIR」をオープンしました。このショップではKYNEとNONCHELEEEの作品が購入できるほか、オンラインでの購入も可能です。また2019年には、東京にも支店をオープンしています。東京では、個展やイベントを開催していますが、作品の制作は福岡でのみしているそうです。その理由として、福岡の方が制作に没頭できるからだと語っています。
KYNEの作品は一目で、彼の作品だとわかる物憂げな表情の女性が特徴です。描くときは、シャープペンシルで下絵を描くところから始め、それをスキャンしてパソコンに取り込み、徐々に線を減らしながら仕上げていくそうです。日本画では、その顔料の性質から油絵のように絵具の上に絵具を重ねて立体的に描くことが難しく、日本の伝統絵画は陰影のない平面的な表現が特徴です。したがって、彼が、大学時代に日本画を学んだことも、現在の作風に影響を与えています。また、描く女性に喜びや悲しみなどの感情がこもらないようにしているという点も、彼の作風を確立させている要因だと言えるでしょう。見る人がその時々の気持ちによって、さまざまな感情を汲み取ってほしいとも語っています。
そして、KYNEは1980年代のアイドルや音楽、大衆文化の影響を受けてきたと、多くのインタビューからわかりますが、そのきっかけは中学生のときに出会った氣志團だそうです。歌詞やCDのジャケットなどにいろいろな80年代のオマージュが含まれていて、その元ネタを発見するたびにおもしろさを感じ、それをきっかけに80年代のさまざまなカルチャーに興味を持ち、触れてきたと言っています。
ここで、これまで開催されたKYNEの展覧会や個展の直近の情報をまとめます。
ーEASTEAST_TOKYO 2023
2023年2月、東京千代田区の科学技術館に出展
ーKYNE SHANGHAI 2022
2022年11月、中国上海のPowerlong Meseumに出展
ーKYNE FUKUOKA 2
2022年9月、拠点とする福岡のcassetteというカフェを併設したアートスペースで開催
ーThe Pulse of Modernity 2021
中国の上海にある宝龍美術館のグループ展に出展
ーWest Bund Art & Design 2021
2021年11月、中国の上海にあるWest Bund Art Centerで開催
ーKYNE KAIKAI KIKI
2021年4月、東京のKaikai Kiki Galleryで開催。村上隆氏とのコラボ作品も注目を集める。
ー福岡市美術館 壁画
2020年9月~2022年12月までKYNEの壁画作品がコレクション展示室の近現代美術室最終壁面を飾る。
ー台北當代2020
2020年1月、台湾の台北南港展覧館で開催
これ以前にも、数々の個展や展覧会を精力的に開催しており、同時に雑誌の表紙を飾ったり、企業とのコラボ作品を発表したりと、幅広く制作活動を行っていることがわかります。
KYNEの作品は、大手アパレル企業からも注目されており、コラボ商品も販売されています。
2021年、世界一売れたスニーカーとして知られるアディダスのSTAN SMITH(スタンスミス)とのコラボスニーカーが発売されました。左右で異なるシュータンデザインと異なるカラーが印象的で、ヒール部分にはKYNEのサインも施されています。
SOPH.(ソフ)は1998年、清永浩文氏によって設立されました。シンプルでありながら洗練された普段着、都市でのスタイリッシュな生活に合うファッションの中に、高い機能性を追及しているのが特徴のアパレルブランドです。
2020年、RAYARD MIYASHITA PARK(レイヤードミヤシタパーク)という商業施設の中に、SOPH. MIYASHITA PARKのオープンを記念して、KYNEとコラボしたTシャツやパーカーが発売されました。デザインされたのは、同じくRAYARD MIYASHITA PARK(レイヤードミヤシタパーク)で行われた個展「KYNE TOKYO2」に出品された作品です。
2021年に東京カイカイキキギャラリーで開かれた個展「KYNE Kaikai Kiki」では世界的に有名な現代アーティスト村上隆氏とのコラボ作品を発表し話題を集めました。
KYNEは今、最も注目されている現代アーティストのひとりであり、その作品価格は上昇傾向にあります。一般に流通しているものはそのほとんどが版画(シルクスクリーン)でありながら、それでも価格は100万円~200万円、アクリル原画ともなれば200万円~2,000万円、場合によってはそれ以上で取引されることもあるようです。
過去にSBIアートオークションに出品された、キャンバスにアクリルで描かれた作品は506万円で落札されており、別の木製ボードにアクリルで描かれた作品はおよそ126万円で落札されています。また山口歴氏とのコラボ作品は、同オークションに出品され、シルクスクリーンでありながらおよそ120万円で落札されました。なお、この作品の落札価格は5万円~15万円と推定されていましたが、実際の落札価格はその推定価格を大きく上回る結果となりました。
KYNEの作品は版画(シルクスクリーン)も多く流通しており、実際に作品を収集することも可能です。しかし、前述の通り、その価格は上昇傾向にあり、村上隆氏とのコラボ作品(シルクスクリーン)は、あるインターネットサイトでは、495万円(額縁なし)という高値で販売されています。その他のシルクスクリーンの作品もその多くが、おおよそ110万円~200万円という価格帯で販売されています。さらに、それら販売されている作品のうち、現時点で購入可能な物は3割程度で、残りの7割はすでに売却済みとなっていることから、KYNEの作品に対する注目や関心の高さがうかがえます。
ここまでKYNEというアーティストを見てきましたが、KYNEは今もっとも注目されているアーティストのひとりであり、その作品も高く評価されています。したがって彼の作品は、今後も価格が上昇していくことが予想されています。そこで、インターネット上で確認できるKYNEの作品の売却、査定の相場価格の一部をご紹介していきます。
福岡博多を中心に活動しているイラストレーターでありKYNEと共同でスタジオ「ON AIR」を経営しているもNONCHELEEとのコラボ作品(シルクスクリーン)の売却相場は60万円~70万円となっています。
村上隆氏とのコラボ作品で、村上氏のシンボルとも言えるカラフルな花をモチーフとしたデザインを背景とするする九スクリーンの作品の売却相場は170万円から200万円となっています。
そして、それらよりさらに高額での売却が期待できるのが雑誌「Casa BRUTUS」の表紙を飾ったコーヒーカップを持つショートカットの女性を描いた作品です。その売却価格は280万円〜300万円と高値での売却が期待できます。
これだけ見ても、KYNEの作品がどれほど注目されているか、今後に期待されているかがわかると思います。ここで取り上げた作品の他にも100万円以上の売却が想定されているものも多くあります。しかし、実際の売却価格は、作品の保存状態、原画かシルクスクリーンか、サイズなど様々な要素によって決定されるため、実際に売却を検討する際には、複数の業者に見積もり、査定の依頼をすることが大切です。
いずれにしてもKYNEは今、注目のアーティストであり、その活動の幅も広く、今後の活躍が大いに期待されるアーティストです。