2023.11.13

クリストとは、どんなアーティスト?略歴や作風、作品の特徴や現在の買取価格について解説

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「クリスト」(本名:クリスト・ヤヴァチェフ)は妻のジャンヌ=クロード(本名:ジャンヌ=クロード・ド・ギュボン)とともに、芸術家夫妻として活動し、数々の独創的なインスタレーションを中心とする作品を残したアーティストです。妻のジャンヌ=クロードは2009年に74歳で、夫のクリストは2020年に84歳でこの世を去りましたが、2021年にも二人が長年構想してきた作品が完成するなど、二人の死後も世界が注目するアーティストです。ここではそんなクリストについて解説していきます。

略歴

 

出生~ジャンヌ=クロードとの出会い

クリストは1935年にブルガリアで生まれました。ソフィアの美術学校とウィーン美術アカデミーで学んだ後、1958年に当時は共産主義体制であったブルガリアから、フランスのパリに移住しました。そして、その年にジャンヌ=クロードと出会います。ジャンヌ=クロードは、クリストが生活費のために肖像画を描きに行った上流階級夫人の娘だったのです。二人はその翌年に結婚します。奇しくも二人の生年月日は同じ1935年6月13日です。その運命的な出会いから半世紀以上にわたって、公私をともにし、二人で芸術活動に取り組んでいきました。クリストの傍らには、常にジャンヌ=クロードの姿があったと言っても過言ではありません。

パリでの活動

パリに渡ったクリストは前衛的美術グループ「ヌーヴォー・レアリスム」の運動に加わりします。「ヌーヴォー・レアリスム」とは、伝統的な絵画技法を捨てて、既製品や廃棄物を使って、非伝統的な技法による美術作品の制作を試みる運動です。大量生産とそれによって生じる大量の廃品をただ否定するのではなく、それらを現代の人間にとって新たな自然環境であり、そこ現実性を見出すという理念に基づいています。その影響もあったのか、パリに移住した初めの頃のクリストは、肖像画と缶や瓶、椅子テーブルなど工業製品を布で梱包する作品を制作していました。

そして、1961年にドイツ、ケルンの港で「悼頭のパッケージ」、「積まれたドラム缶」を発表します。翌1962年には、パリの通りをドラム缶で封鎖した1日限りのゲリラ的な作品「ドラム缶の壁ー鉄のカーテン」も発表しています。これらが、単に物体を梱包するという枠から出て、その後の制作活動につながっていくきっけとなった作品だと言われています。

ニューヨークへ移住

1964年、クリストとジャンヌ=クロードは、活動拠点をアメリカ、ニューヨークへ移し、1973年にはアメリカ国籍も取得、その後、他界するまでニューヨークを拠点に活動しました。この頃から、二人の作品規模も大きくなっていきます。

作風とモットー

クリストの作品は、一言で言えば「梱包」と表現されます。公共建築、あるいは自然を舞台に、包む、覆う、貼る、積むという手法を用い、巨大なインスタレーション作品を制作する彼らのプロジェクトは大がかりなものでもあります。
 

そのような大規模なプロジェクトを実現するためには、当然ながら膨大な時間と資金を要します。一方で、彼らのモットーは、スポンサーや美術館、政府や企業など、他の誰にも資金援助を頼まないことだったそうです。芸術家として作品を作る上で、他からの束縛を受けずに、常に自由に活動を続けることが大切だという信念のもと、必要な資金はクリストのドローイングやコラージュなど、美術作品を販売して調達する方法を貫きました。

また、公共の場や自然に巨大な作品を制作するとなると、その設置や設営に、地域住民や地権者、各関係機関からの許可を得る必要も生じてきます。ときには反対運動が起こったり、クリストの作品は芸術か否かという論争を巻き起こしたりもしました。作品の巨大さに、それらの背景が相まって、クリストのプロジェクトは長期間にわたるビッグプロジェクトとなります。1977年に始まった、「マスタバ・アラブ首長国連邦のプロジェクト」というアブダビの砂漠に41万個のドラム缶を用いるプロジェクトは2023年現在も進行中です。

クリスト夫妻の作品は、その性質上、一時的なものであり、一定の期間が過ぎると解体されたり、撤去されたりします。そもそも、クリスト自身もその永続性を意図して作品を制作しているわけではありません。膨大な時間と資金を費やした壮大なスケールとは裏腹に、短期間で消えてしまう刹那的な作品、それが見る人の心に強烈な印象を残すのです。また、クリストにとっては、作品そのもののみならず、その着想から、資金調達、交渉、試行錯誤など、作品が完成するまでの全てのプロセスそのものが「作品」なのかもしれません。

近年の代表作

2021年ー包まれた凱旋門(L’arc de Triomphe, Wrapped)

2021年9月、パリの象徴である凱旋門が16日間布とロープで包まれました。これはクリストが1962年から構想していた作品で、再生可能な、銀色のコーティングが施された巨大な青い布と赤いロープで凱旋門が包まれました。

新型コロナウイルス拡大の影響で実現が延期され、実現の前年、2020年にこの世を去ったクリスト自身は、残念ながらこの作品を目にすることができませんでした。しかし一方で、この作品の実現は、新型コロナウイルスによって、あらゆる社会活動を制限されていた人々を元気づけ、勇気づけるイベントとしてメディアで取り上げられ、世界の注目を集めました。

2018年ーロンドン・マスタバ(The London Mastaba)

2018年6月から9月まで、イギリス、ロンドンの中心部にあるハイド・パーク内に二つの面が等脚台形になるように大量のドラム缶を積み上げ、池の上に浮かべた作品が登場しました。池の上に浮かべられた高密度ポリエチレン製のプラットフォームの上に7500個以上のドラム缶を水平に積み上げた作品で、高さ20メートル、幅30メートル、奥行き40メートル、そしてその総重量は600トンにもなる巨大な作品です。全てのドラム缶の側面は赤と白、垂直壁となる部分は青や紫、赤で塗装されており、水面から忽然と姿を表したような光景と周りの木々の緑とのコントラストが目を引く作品です。さらにその色は、光の中で様々な変化を見せ、一瞬として同じ風景に出会えることがはありません。自然の中にある人工的で周囲と全く異質なものでありながら、水面から自然に芽を出してきたようでもあります。

また、生態系に配慮し、環境への影響が小さいと認められた素材が使用されており、作品の解体後はその資材の多くがリサイクルされました。

作品の取引価格

クリストの作品は、インスタレーション作品、プロジェクトであり、その展示が終わったあとは解体されるため、それの作品そのものを手に入れることはできません。しかし、それらのプロジェクトの準備や資金調達のために描いたドローイングやスケッチ、リトグラフ、コラージュ作品は取引されており、買取や売却、査定が可能です。原画やエディション付き、特にエディション数の少ない物であれば、希少価値が高く、高値で取引されます。

オークション

2016年、サザビーズニューヨークのオークションでは、コロラド州アーカンサス川のプロジェクトを描いたドローイングが2300万円ほどで落札されました。なお、この「Over The River」というプロジェクトは、2017年に中止が発表されました。現場の土地がアメリカ政府の所有地であり、同年ドナルド・トランプ氏アメリカ大統領に就任したことが理由だと言われています。1992年に構想が始まってから、実に25年の歳月をかけて準備をしていただけに、世界に衝撃を与えた発表でした。

イギリス発祥で、現在はニューヨーク、ロンドン、ジュネーブ、香港などでオークションや展覧会を行っており、2016年に東京にもオフィスをオープンしたフィリップスのオークションにもクリストの作品は多く出品されています。

そのオークションにおいて、「Orange Store Front (Project) Part Ⅰ」という作品は$175,000(現在のレートで2400万円超)、「Wrapped Reichstag (Project for Berlin)」は$157,500(現在のレートで2100万円超)、「The Umbrella Project for Japan and Western U.S.A.」は$138,600(現在のレートで約1900万円)で落札されています。これらの作品はいずれもボードやパネルなどにグラファイトやパステル、鉛筆などで描かれ、コラージュを施されたもので、サイズも大きいもので約80センチ×約70センチと、比較的大きい作品であるため、このような破格の値がついているのではないでしょうか。

 

2023年7月27日、マレット・ジャパンのオークションにクリストの作品が2点、出品される予定です。一つは「Wrapped Museum of Contemporary Art, Project for Chicago」というリトグラフ(版画)の予想落札価格は200,000円~300,000円、Two Lower Manhattan Wrapped Buildings, Project for New York」というリトグラフとコラージュの作品の予想落札価格は700,000円~1,000,000円とされています。

 

売却・査定

クリストが手がけた作品そのものは「プロジェクト」であり、その完成品そのものを手に入れることはもちろん、再び目にすることもできません。したがって、彼がそのプロジェクトを遂行するにあたって残した数々のドローイングやコラージュは、彼の息吹、功績、人生そのものを今感じることができる唯一の作品であると言えます。直筆の作品はなかなか一般の人々が手を出しやすい価格とは言えませんが、リトグラフなどであれば不可能ではないかもしれません。また、クリストがこの世を去ってしまった今、新たな作品は目にすることはできないため、今後価格もさらに上昇していくかもしれません。もし、彼の作品の売却を検討している場合は、いくつかの業者に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。

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