2023.11.22

塩田千春の経歴や作品、査定買取についての解説

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皆さんは塩田千春というアーティストをご存知ですか。塩田千春はベルリン在住の現代美術家です。「生きることとは何か」「存在とは何か」を探求しつつ、その場所や物に宿る記憶といった不在の中の存在を糸で紡ぐ大規模なインスタレーションを中心に、立体、写真、映像など多様な手法を用いた作品を制作しているアーティストです。

塩田千春の生い立ち

塩田千春は1972年、大阪府岸和田市に生まれました。

京都精華大学芸術学部洋画専攻を卒業後、1996年にハンブルグ美術大学へ入学。

その後、1997年から99年までブラウンシュバイク美術大学に在籍し、マリーナ・アブラモヴィッチに師事。

師となったマリーナ・アブラモヴィッチは「パフォーマンスアートのグランドマザー」と呼ばれており、レディー・ガガも影響を受けているといわれています。

1999年から2003年までベルリン芸術大学にて、レベッカ・ホルンに師事する。

レベッカ・ホルンは映画監督であり、「キネティック・スカルプチャー(動く彫刻)」などの作品を制作しています。レベッカ・ホルンは空間の使い方が非常にうまく、塩田千春の作品に大きな影響を与えたと考えられています。

1996年にドイツに渡り、現地で結婚し現在もベルリンに在住しています。

2000年より現在まで、世界各地で個展を行うほか国際展にも多数参加している。また、オペラなどの舞台美術も手がけています。

2008年には芸術選奨新人賞、平成19年度咲くやこの花賞美術部門賞を受賞。

2015年にはヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展で、日本代表に選出され「掌の鍵」を日本館で展示した。

2017年、森美術館の個展の話が打診された翌日にがんの再発を告げられました。

がんの治療を受けながら、森美術館の展示に向けた制作を行っていました。塩田千春はインタビューにて「がんの治療はまるでベルトコンベアに乗せられたよう」であったと語っています。

2019年には25年間の活動を振り返る、大規模個展「塩田千春展:魂がふるえる」が森美術館で開催された。

2020年に、毎日芸術賞受賞。多摩美術大学大学院教授に就いています。

作品の特徴

塩田千春の作品をもっとも特徴づけるのは、黒や赤の意図を空間全体に張り巡らせるダイナミックな没入型のインスタレーションです。観客はその空間の中を歩きながら、目に見えないつながりなどカタチの無いものを体感的、視覚的に意識させられます。

黒は夜空とも宇宙ともとらえることができ、赤は血液、あるいは「赤い糸」といった人と人とのつながりと考えることもできると塩田千春は語っています。

また、「不在の中の存在」をテーマに咲く人を制作しており、記憶や夢の中だけに存在する、物理的には存在しないものの気配やエネルギーなどにかたちを与えてきました。彼女の作品は、観るものに魂や生きる意味を問いかけます。

アカデミックな美術の界隈では、塩田千春の作品は「私的すぎる」「説明的すぎる」という批判があります。ですが、作品はそのアーティストが体験したことなどを元に作成されたりするので、むしろ「一人の人の人生」を通した表現であるからこそ共感を得られるのでしょう。

代表作品

塩田千春の代表的な作品を紹介します。

この作品の多くは、塩田千春の25年の活動の軌跡を展示した「塩田千春展:魂がふるえる」に展示されています。

不確かな旅

真っ赤な糸で覆われた空間に、フレームだけの船が配された作品です。

2015年のベネチア・ビエンナーレ日本館の展示では、古いベネチアの伝統的な船の上部に、夥しい数の鍵が吊るされていましたが、「不確かな旅」では船はより抽象化され、赤い糸で埋め尽くされた空間は、不確かな旅の先にある多くの出会いを示唆しているかのようです。

手の中に

今にも壊れそうなはかない造形物が、子どもの両掌のなかで守られている作品です。

掌にそっと収まる抽象的なモチーフは、彼女の身体に内在する声明、あるいは魂を表現しているようでもあります。この子どもの手のひらは、彼女の実娘の手を型どったものだそうです。

静けさの中に

塩田が幼少期に、隣家が夜中に火事で燃えた記憶から制作されたものです。

燃えたグランドピアノと観客用のいすが、黒い糸で空間ごと埋め尽くされる作品です。音の出ないピアノが奏でる沈黙を黒い糸を用いて表現されています。

時空の反射

体御覆う皮膚のようなドレスは、自身の内部と外部の境界を象徴し、そのドレスが黒い糸で埋め尽くされた空間に浮かぶことで、不在の存在を感じさせる作品です。

また、鉄枠に囲まれた区間を半分に仕切る鏡の両側にドレスが吊るされているので、虚像として鏡に映るドレスと反対側の空間に実在するドレスが、観るもの者の意識の中で混在する作品になっています。

内と外

1996年にドイツに移住し、現在はベルリンを拠点にしている塩田千春は、ベルリンの壁の崩壊から15年後の2004年頃より、窓を使った作品を制作しています。再開発が進み取り壊されていく建物の、廃棄された窓枠をあつめ作品としたのです。

窓はプライベートな空間の内と外の境界として存在しますが、東西ドイツを分断した壁も連想されます。この「内と外」にはいくつかのバージョンがあります。

集積-目的地を求めて

「最終的に440個になった」と塩田が話していた、スーツケースが会場の宙を舞う。ベルリンの市で見つけたスーツケースのなかに、古い新聞を発見したことがきっかけで製作された。ゆらゆらとスーツケースがぶつかり、音を鳴らす様子は生物的で、見知らぬ人の記憶や旅が今も続いているかのような感覚に陥る作品です。

作品はどこで見れるのか

塩田千春の作品はどのような場所で見ることができるのでしょうか。

2019年に森美術館で「塩田千春展:魂がふるえる」が開催されました。この個展は、塩田千春の闘病から始まった展覧会で、ガンの手術後に感じた、魂が置いてきぼりにされているような感覚を作品に込めたそうです。

この森美術館での個展をまとめたカタログも328ページにも及ぶ大作であり、ファンなら必ず手に入れたいものです。作品が撮影されたポストカードなども販売されていました。また、この展示では多くの作品が撮影可能であり、来場者がSNSに塩田千春の作品をあげ、その作品の内容について議論が生まれたそうです。

2021年から十和田市現代美術館に、常設作品として「水の記憶」が展示されています。

2023年にはアメリカのアーマンド・ハマー美術館やスイスのハウス・コンストルクティヴ美術館など世界各地で個展が開かれています。

塩田千春の作品の査定、売却は可能なのか

ここまでは、塩田千春の経歴や作品に関してご紹介いたしました。ここからは塩田千春の作品を所有されている方や所有しようと思っている方に向けて、買取や査定売却についての説明に移ります。

塩田千春の作品のオークション価格

塩田千春の作品は3年連続、落札価格が予想上限超えをしています。

2019年に森美術館で開催された大規模個展「魂がふるえる」では66万人を超える来場者数を記録し、話題となりました。

マレットジャパンの近代美術のオークションでは水彩作品1点と版画作品6点が出品され、4点が落札予想価格上限超えで落札され、2点は落札予想価格下限、落札予想価格上限と同額で落札されている。

中でも、落札予想価格20~30万円のところ、34万で落札された「Between two hands」は同技法を使った作品の落札予想価格平均は25万円前後となっているが、2020年より国内オークションでの出品がみられたため、落札予想価格平均は10万~15万円と低目の設定であった。しかしながら落札予想価格上限平均の2倍以上の価格で落札される好結果を残しています。2021年には更なる上昇を見せ、右肩上がりの推移となり時価指数も上昇しています。

個展「塩田千春展:魂がふるえる」が台湾で開催されるなど、アジア、太平洋地域を回る予定になっているので、どこまでの上昇をみせるのか楽しみなところです。

塩田千春の作品の買取相場

空間に糸を張り巡らせた立体アートやリトグラフが主な作品で、インテリアとしても非常に飾りやすく高価買取を行っている業者もあるようです。

作品によって違いますが、例えば「Dress in the Red」は自身の壮絶なガン体験から生まれた、生きる事への執着を感じ取れる絵画作品で15~20万、「No Title 5」はその時の社会の問題を連想させるような作品で20~25万前後、最も高い身体のすべての毛細血管が展開とリンクしたかのような作品「Hourglass」は90~100万円という相場になっています。

塩田千春は注目の作家であるとともに、愛好家からも人気の高い作品が多い作家なので、今後の相場上昇による高価査定価格が期待できるようです。

塩田千春の作品の価値

経験、記憶、不安、絶望夢、などの深層心理のカタチの無いものをカタチとして表現する作品(インスタレーション、立体作品、映像、写真、ドローイング、舞台美術)などで、国内外で評価の高いアーティストです。

活躍の場が広がっているため、作品の価値や価格が上昇しています。

まとめ

本記事では、塩田千春の経歴をはじめ、作品の特徴や査定、売却などについてご紹介しました。

塩田千春はベルリンを拠点に活躍しており、カタチの無いものを表現したパフォーマンスやインスタレーションで知られています。個人的な体験を出発点にしながら、存在といった普遍的な概念を問うことで世界でも幅広い人々を引き付けています。

塩田千春の作品を所有しようと思っている方、売却を考えている方はこの記事を参考にしながら、各買取業者に問い合わせてみてはいかがでしょうか。

そして、塩田千春のこれからの活躍に注目していきたいところです。



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