2023.11.27

小磯良平の気品ある女性の肖像画の魅力と買取査定・売却について紹介

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小磯良平は、数々の肖像画を残している洋画家です。フランス名画などに影響を大きく受け留学も経験しながら、気品のある肖像画を多く描いています。彼ならではの落ち着いた色合いが特徴で、高いデッサン力に評価が集まっています。

また、戦争も経験し、従軍画家として群像画も多く描いていて、昭和を生き抜いた画家でもあります。

昭和の時代を長く生きた彼にとって、様々な大きな出来事が画風に影響を及ぼしているとも言えます。そんな彼の作品の魅力と特徴について紹介していきます。

また、作品の売却ができるのか、買取査定はどのくらいなのかも詳しく紹介しますので、参考にしてください。

小磯良平とは

小磯良平は、1903年神戸市に生まれた、昭和に活躍した洋画家です。肖像画を多く描き、特に群像をたくさん描いたことで知られています。

小磯良平が生まれた神戸市は、旧外国人居留地を中心に発展した街と言えます。洋館が並ぶ街で、クリスチャンの家で育ったのが小磯良平です。

子どもの頃から、紙と鉛筆があれば、長い時間絵を描いていたと言います。そして、1921年、18歳の頃、倉敷の大原コレクションで見た「現代フランス名画家作品展覧会」に感動し、画家を志します。

1922年に東京美術学校(現東京藝術大学)の西洋学科に入り、猪熊弦一郎・岡田謙三・荻須高徳ら優秀な同級生と絵を学び始めます。

小磯良平の作品の特徴と魅力

小磯良平の作品を紹介する上で、次の3つのポイントで考えてみたいと思います。

まずは、彼が東京美術学校在学中に早くも23歳の若さで、帝展の特選に輝いたことが1つ目のポイントです。

高いデッサン力で1926年在学中23歳で「T嬢の像」が帝展特選受賞

当時、大学在学中に特選に選ばれることは異例ともいえることでした。美術学校では出品を実際には禁じていましたが、その完成度の高さに早くも強烈なデビューを果たします。彼の描写力は若くして、完成度の高いものでした。

彼は80歳を過ぎ、晩年になっても、1日2~3時間のデッサンを日課にしていたと言われています。彼のデッサンを大事にする思い、それこそが多くの彼らしい肖像画を誕生させていると言えるでしょう。小磯良平のデッサン力は高い評価を得ていて、晩年の作品などでも、版画作品などで高評価となっているのが特徴です。

留学により欧州絵画の古典的な技法を日本洋画に根付かせたい思いに

そして、18歳の頃見た「現代フランス名画家作品展覧会」に影響された彼は、1927年大学を卒業後翌年に念願のフランスへ留学したことも大きなポイントです。2年間ヨーロッパに滞在。各地の美術館を巡り、アングル、コロー、クールベ、マネ、ドガなどの巨匠達の作品を鑑賞します。また、劇場では踊り子たちの踊りやクラシック音楽を楽しんでいます。

そして、神戸へ戻ってから、精力的に絵を描き、「欧州絵画の古典的な技法を日本の洋画に根付かせる」ことを目標にします。独自の作風を作り上げ、小磯良平の描写力もこの頃に磨かれていったと言えるでしょう。

ヨーロッパのモダニズムな画風が根底にあって、落ち着いた色彩、そして気品を感じさせる肖像画が彼の作品の大きな魅力です。

彼の描く女性画は、着物を着ている女性も西洋ソファに座っていることが多く、そこからも欧州絵画の技法を日本の洋画に取り入れたいという想いが詰まっていると言えるでしょう。

また、ルーブル美術館を見学した際は、パオロ・ヴェロネーゼ「カナの婚礼」に衝撃を受け、群像表現を極めることも彼の生涯のテーマになっていきます。

群像を描きたい思いで戦争画を描く

そして、1938年から1年間藤田嗣治らとともに陸軍省嘱託の身分で従軍画家として中国に行き、帰国してから戦争画を描いたのもポイントです。

群像画の傑作と言われる「親子関を征く」と「斉唱」を発表。1941年に描かれた「斉唱」は、まさに小磯良平の群像画の傑作です。「戦争記録画」として描かれた絵で、後年心苦しく思ったという絵ですが、太平洋戦争が起こる直前に、楽譜を手に素足の若い女性たちが懸命な思いで歌う姿は、様々な感情を多くの人にもたらす作品です。一人一人の女性の表情に見入ってしまいます。

こうした群像画の描き方も、高いデッサン力に裏付けされていると言えるでしょう。

そして、1950年~1971年にかけて20年余り東京芸術大学の教壇に小磯良平は立つこととなります。晩年、彼の目指す油絵の本質を示す、ヨーロッパの古典的な技法を日本に伝えるために指導をしたのでしょう。

その頃の彼の絵は、モダニズムの光を放った作品となっていて、心に滲みわたる清澄な情感を讃える絵が多くなっています。彼にとって、戦争を体験したからこそ平安の絵を描いていたと言えるものです。また、晩年聖書の挿絵なども制作。小磯良平にとっては、挿絵の仕事は、プロフェッショナルな画家として、大事な表現の場だと言います。デッサン力を生涯に渡って大事にした人物の言葉と言えるでしょう。

小磯良平の経歴を紹介

1903年神戸市神戸(現在の中央区)生まれ、岸上家の8人兄弟姉妹の次男として生誕

兵庫県立第二神戸中学校(現在の兵庫県立兵庫高等学校)で竹中郁と同級となり、生涯の親友となる

1922年東京美術学校(現在の東京芸術大学美術学部)入学、西洋画科に進み、猪熊弦一郎・岡田謙三・荻須高徳らを同級生に持つ

1925年親戚の小磯吉人の養子となり改姓し、「兄妹」が帝展入選

1926年在学中、「T嬢の像」で帝展特選受賞

1927年東京美術学校(現在の東京芸術大学美術学部)西洋画科を首席で卒業

1928年フランスに留学

ルーブル美術館のパオロ・ヴェロネーゼ「カナの婚礼」に衝撃を受け、群像表現を極めることを生涯のテーマにする

1933年神戸でキリスト教(組合教会系)の洗礼を受ける

1936年フランスから帰国後「新制作派協会」(現・新制作協会)の結成に加わる

1938年~1939年藤田嗣治らとともに陸軍省嘱託の身分で従軍画家として中国で帰国後戦争画を製作

1941年群像画の傑作「娘子関を征く」「斉唱」(第4回新文展に出品)を相次いで発表

1941年「東京八景」(太宰治)の装丁を制作

1947年「兵庫県民歌」楽譜の表紙画を手がける

1953年東京藝術大学教授となる、のちに同大学名誉教授の号を授与される

1970年日本聖書協会の依頼により32点の聖書の挿絵を完成

1979年 文化功労者受賞

1982年 日本芸術院会員

1983年 文化勲章受賞

1983年 神戸市名誉市民となる

1988年12月肺炎のため神戸市東灘区で85歳で死去

小磯良平の有名作品

・「T嬢の像|1926年」

東京美術学校在学中に帝展特選に選ばれた作品です。小磯良平が23歳で制作した作品ですが、既に独自の作風が感じられます。着物を着て一人掛けソファに座っている女性を描いていて、彼らしい全体的に落ち着いた色合いで、品のある空気感が魅力の作品です。神戸市出身のため、兵庫県立美術館に所蔵されています。

・「日本髪の娘|1935年」

韓国国立中央博物館に李王家の日本美術コレクションとして所蔵されている作品です。

フランス留学の影響を受けた頃の作品で、日本髪で前かがみで西洋ソファに座る女性が描かれています。日本髪の女性の凛としたあでやかな雰囲気が感じられる作品となっています。

・「着物の女|1936年」

フランスから帰国した頃の作品です。着物でゆっくりソファに寛ぐ女性が描かれています。やわらかな空気感の中に、しっかりとした構図の女性が配置され、着物の色合いの美しさと女性の品が感じられる作品です。

神戸市立小磯記念美術館に所蔵されています。

・「斉唱|1941年」

従軍画家としても従事していた小磯良平の作品です。楽譜を手に斉唱する若い女性たちの表情を描いた作品として有名です。群像画の傑作と言われていて、兵庫県立美術館に所蔵されています。

作品が見られる場所を紹介

小磯良平の作品が見られる美術館は、兵庫県や東京その他に多くあります。

神戸市出身のため、「兵庫県立美術館 小磯良平記念室」で、多くの作品を見ることができます。

「彼の休息|1927年」が「東京藝術大学大学美術館」に所蔵されていて、「練習場の踊り子達|1938年」が東京国立近代美術館にあります。

「二人の少女|1946年」は「神戸市立博物館」に所蔵され、「働く人びと|1953年」が三井住友銀行に所蔵されています。

「婦人像|1960年」は、元宝塚歌劇団の女優八千草薫がモデルを務めた作品です。「神戸市立小磯記念美術館」で見ることができるでしょう。

「絵画|1974年」「音楽|1974年」は赤坂迎賓館にあり赤坂迎賓館の大ホールにて展示されています。

晩年の作品としては、「KOBE, THE AMERICAN HARBOUR|1985年」が「兵庫県公館」に所蔵されています。

小磯良平の作品の売却は可能?買取査定はどのくらいなのか

小磯良平の作品は、高いデッサン力による絵画作品が人気です。油彩だけでなく、デッサン(素描)も売却時には人気となっています。

売却時高額買取査定となるのは、女性を描いた作品です。特に油絵では、晩年に女性を描いた作品が、高い買取査定の傾向があります。

また、水彩やデッサンなどの紙に描かれた作品は、作品によって油絵よりも高い買取査定のものがあっておすすめです。また、版画作品(銅版画、リトグラム)も高く、特に銅版画の人気があり、買取査定時に高い傾向です。

銅版画で数万円~30万円、リトグラムで数万円台となります。「舞妓」や「バレリーナ」などは人気で、「バレリーナ|1968-69年」は、銅版画のエッチングで制作された作品では25万~30万円の高額買取査定が望めるでしょう。細かな線で力強く描かれていて、高いデッサン力が見られるため高評価となっています。

まとめ

小磯良平の作品の特徴と魅力について紹介しました。若くして才能を開花させ、フランスに憧れ、欧州絵画の古典的な技法を日本洋画にもたらした画家です。高いデッサン力があり、そうした基礎から日本洋画を発展に導いたと言えるでしょう。

デッサン力が高く、彼の描く女性画、群像画は、落ち着いた色彩の中に、気品のある雰囲気があって人気です。

今、高額で買取査定してもらえる所を探すのも良い方法ですし、もっと高く売れる状況を待って売却をすることも可能です。

ぜひ、紹介した小磯良平の魅力をよく知った上で、買取査定と売却について検討されることをおすすめします。



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