2023.12.04

伽羅(きゃら)とは 香木の長い歴史性に注目 

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香木

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樹木より採れる香料全般のことを「香木(こうぼく)」と言います。また、香木の種類のひとつが、「伽羅(きゃら)」です。伽羅は、「沈香(じんこう)」の中でも優良品として高く評価されています。

果たして、伽羅にどのような魅力が存在しているのでしょうか。

それは、香り自体の魅力であり、希少性であり、歴史性です。

この記事では、伽羅に存在する魅力を解説します。

ぜひ一読ください。

<h2>香木伽羅の魅力はどこにあるのか </h2>

香木である「伽羅」。香木であれば、そのまま字から意味を知ることができますが、そのような意味では、伽羅という漢字は、それ程私達の生活に身近という感じでもありません。

香木の意味は、サンスクリット語では、「tagara」となります。

それを漢字にすれば、「多伽羅」であり、伽羅は、「多伽羅」を略したものであるという説があります。

また、黒沈香の意味は、「kalaguru」であり、「kalaguru」を音略したものが伽羅であるという説があります。

伽羅は、香木のひとつの種類です。しかし香木の中でも伽羅は、特別な存在と言っていいでしょう。伽羅は、1500年という時間の中で育まれた至高の香りということができます。

<h2>香木・伽羅の長い歴史</h2>

香木・伽羅は、長い歴史の中で価値が育まれてきました。

日本において、仏教が伝えられると、やがてそこに香りの文化も浸透することになります。

香木のはじまりは、推古三年(595年)の頃です。淡路島に漂流した一本の流木を島人が火にくべたら……。今まで体験したことのないような芳香が立ち上がって、島人は驚嘆します。やがて、その流木は都で推古女帝に献上されることに。摂政の聖徳太子は「これはまさに稀に見る至宝沈香である!」と感激したと言います。

このようにして、香文化は、仏教とともにして「祈りの香」として伝わっていくことになります。

香りというものは、鼻でかぐものではなく、心で聞き取るものであったのです。そのような意味合いから、香を聞く聞香(もんこう)という行為が誕生し、広く知られるようになります。

<h3>平安時代の香木・伽羅</h3>

平安時代になって、香りは、仏前に供えるものだけでなく部屋にたき込めたりする仏教と切り離した香りだけを楽しむ文化が発展します。

その時代「香」は、平安貴族らの知性的感覚を表現する方法であり、それ相応の身分の証ともなりうるものでした。このような香がもたらされた平安期の雅な有り様は、「源氏物語」であったり、「枕草子」あたりからも知ることができます。

<h3>鎌倉時代 </h3>

鎌倉時代においては、茶碗であったり、茶入と言ったものが、まるでお城ひとつの価値として扱われていました。武将たちは、そのようなものをいろいろコレクションすることで、自己の権力を誇示していたのかもしれません。また、武将たちは、荒々しい戦いの連続の中で、唯一の安らぎの方法として「香」を大切な嗜みとし愛好していたのです。

いかに、香りというものは、大事な要素であったことか。

武士の嗜好や意識がさらに香木の価値を向上させ、一本の香木の賞味であったり、たき比べなどへと愉しみが変化していきます。

また、武士たちが良質の香木をなんとしても手に入れようと激しい争いになったということです。実際に、香木によって、殺し合いまでが発生していたのです。

ぶっちゃけたかが香りのためにです。

現代社会でもいろいろと殺人事件が起きていますが、香りで殺人が起きたとすれば、さも滑稽な事件に見えてしまうことでしょう。しかし、当時、香木というものは、それ程までに貴重な存在だったのです。

<h3>室町時代</h3>

また、室町時代においても、伽羅はとても貴重な存在として扱われていました。

「香道」とは、室町時代に確立した文化です。室町時代に登場する八代将軍足利義政は、後、芸道となる香の体系のもとを作ります。また、公家の三条西実隆公を祖とした「御家流」と、武家の志野宗信を祖とした「志野流」の二大流派が誕生し、香道文が継承発展されていくことになります。

「香道」においても、まさに伽羅は、なくてはならない存在です。香道では、10人程度の人たちが集まって、香木の香りを聞き分けていたのですが、その中心に存在しているものこそが伽羅です。

また、香道に精通している方々に、いろいろとお話しを聞いたところ、いろいろ香木があるけれど、その中でも伽羅が一番だと主張する方々がとても多いことに気づきます。

これはあくまでも個人的意見に過ぎないのですが、今後、香木についていろいろ知ろうと思うことで、やはり同じ思いをする方々は多いことでしょう。香木をこれから知ろうとする初心者の方々は、最初から伽羅からはじめておけばいいのかもしれません。

香道の世界で香木は「六国(りっこく)」と呼ぶ六種に分類されています。その中でも伽羅は、ほとんど別格扱いと言っていいでしょう。

<h3>江戸時代</h3>

江戸時代に入って、豪商であったり、町人の間にも香文化が浸透し、この時代においても伽羅は極上品の見方がされます。

江戸でも、香は生活として、また遊びの要素として、日本の文化に必要不可欠な役割を担ってきました。

<h2>現代社会における香木・伽羅の評価は?</h2>

明治時代を迎えると、文明開化の波が起こり、次第に過去に存在する日本的文化である香道は衰退していくことになります。

しかし、現代社会においては、日本独自の伝統文化である香道の価値が見直されつつもあります。香道は、和の魅力的文化として海外からも注目されるようになります。

現代は、海外において香席のイベントが開催されるなど、新しい香道時代を予感することができるような時代です。

<h2>香木・伽羅の魅力は育てることができないこと</h2>

香木・伽羅の魅力は、私達が簡単には育てていくことができない背景より作られていると言っていいでしょう。

科学の進歩が目覚ましい現代社会においても、はっきり言えば伽羅のことはあまりよくわかっていない現状があります。よって、当然、自分自身で人工で育てていこうと思っても難解きわめてしまうことでしょう。

実際問題、最近になって、クオリティーの高い栽培されたものも登場はしてきているのですが、やはりそれでもそれは天然の伽羅を超え出るものではありません。

また、伽羅は育成されていくのに50年から100年ほどの気の遠くなるような時間を費やすことになります。よって伽羅には、希少価値が存在して、今後もそのハードルはなかなか解消できないでしょう。

ですから、伽羅の価格は、2021年現在で1グラムあたりが50,000円以上という高額価格の状況なのです。オークションで1グラムが160,000円程度で取引されるという事態も起きています。

「金」と比較しても、金の場合、2021年1月12日、1グラムあたりおおよそ7,000円弱で取引がされています。

金よりも伽羅の方に価値が存在していると聞けば「ただ事ではない!」と思う方々も多いことでしょう。

<h2>香木・伽羅は買取してもらうことができる?</h2>

実家を整理していたら、香りのある木が出てきた……。

それが、香木であるのかもしれません。

「香」は仏教徒との結びつきが強いため仏壇から出てきた……、というケースも決して珍しくないようです。

そして、伽羅と言えばそれ程知識を持たないでも「値段が高い」というイメージを持っている方々が多いことでしょう。

しかし、お家から出てきたものを査定してもらおうと思うものの、香木でなかったら恥ずかしいからやめておこう……とか、高価な香木であるはずがない……という先入観からやめてしまう方々もいるようです。

しかし、もしもそれが正真正銘の伽羅であれば……。非常にもったいないことではないでしょうか。

「沈香」の中でも伽羅は特別な最高クオリティーの香木としてニーズが高くあります。

しかし見た目、伽羅であるかどうか判別もなかなか難しいのが現実です。素人目で正真正銘の伽羅を正確に判別できる人などおらぬことでしょう。

それは、伽羅ではなく、沈香なのかもしれませんし、白檀なのかもしれません。そうすれば、伽羅だけでなく沈香、白檀の知識も必要です。

沈香は、東南アジア原産のジンチョウゲ科ジンコウが、雨風であったり、病気などから身を守る際、分泌された樹脂が蓄積し、乾燥したものです。

また、白檀はインド原産のビャクダン科ビャクダンのことであり、最も香りが高いとされる幹中心部を削り出し使用されます。産出国は主としてインド、インドネシア、オーストラリアなどで、その中でもインドにあるマイソールで採取された老山白檀は白檀の中でも最上級とされています。

沈香は熱して鑑賞する香木であるのですが、白檀は常温でも香りを楽しむことができるため、仏像であったり、数珠、扇子といった工芸品にも使用されています。

香木は「種類」であったり「産出国」、樹脂の「蓄積度合い」であったり「蓄積箇所」「採取された年代」……などによって、大きく買取金額にも違いが出てきます。

特に伽羅は、ベトナム産が最高級として知られていますが、ほとんどそれは採りつくされてしまったため、希少価値の高さから大変高額な取引がされています。

<h3>香木・伽羅の買取ポイント</h3>

伽羅をお持ちであれば、想像している以上の高い買取価格がつく場合があります。しかし、より高く買取してもらうためには、以下のような点にも注意が必要です。

香木は基本的に言えば、お手入れは必する必要がありません。しかし、それでも保存方法には注意する必要があります。保存状態が良好であれば、より高い査定額を期待することができるでしょう。

ポイントは、直射日光をできるだけ回避し、変色を防ぐことです。カビであったり、膨張するのを防止するために、湿気に注意する必要もあります。また、他の香りの強いモノの側に保管することはできるだけ避けてください。

香木の希少価値が高まるとともに、残念ながら偽物の香木も増えてきました。ですから、本物である証として、購入店の箱であったり、証明できるものがあれば、査定額はより高くなりやすいです。

また、香木は、基本的にサイズが大きい方が買取価格が高くなる傾向があります。さらに、香木は産地によってもクオリティーや香りが変わると言われています。その理由によっても価格に違いが生まれます。

<h2>まとめ</h2>

いかがでしょうか。

今回は、香木の種類のひとつである伽羅について解説しました。

伽羅であることで、買取してもらおうと思えば、想像している以上の高い査定額がつく可能性も充分あります。

現代社会においても香り文化がもう一度見直しされる動きも見えてきています。今後、香木・伽羅の価値もより高められていくことを推測することができます。

しかし、素人の方々は、あまりにも香木・伽羅の知識を持っていなさすぎではないでしょうか。それでは詐欺に引っかかるリスクも高まってしまうだけです。まずは、香木・伽羅とは何か、歴史性を知ることからスタートしてみましょう。



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