2024.05.23
作家名
2024.05.23
「小泉悟」という彫刻家についてご存じでしょうか。小泉悟が制作する彫刻作品は、子供と動物をモチーフに、着ぐるみを着たような愛らしくかわいい姿が印象的です。沖縄を拠点として活動をしており、日本のみならず、中国や台湾、韓国などアジアを中心として海外でも個展やグループ展に出品しています。ディズニー公式のコラボレーション作品も発表するなど、これからの活躍が期待されているアーティストです。ここでは、今後さらに注目を集めるであろうアーティスト、小泉悟について解説していきます。
小泉悟は自身の詳細な経歴などを公開していませんが、公式ウェブサイトからその略歴を知ることができます。
小泉悟は1983年に宮城県で生まれました。2007年に沖縄県立芸術大学を卒業、その後、同じ沖縄県立芸術大学の大学院を修了しました。大学、大学院時代を通じて、彫刻を専攻しています。大学在学中の2007年に「ART MEETS ARCHITECTURE COMPETITION」で最優秀賞・審査員特別賞を受賞した経歴があります。
小泉悟は、日本のみならず海外でも展覧会に出品しています。ここでは、これまでに小泉悟が出品した個展の記録を紹介します。
この展覧会は、小泉悟初めての絵画展です。展覧会の主催者による紹介文には、「木の塊から姿を掘り出す小泉は、より抽象性を探るべく新たな旅に出かけました。私たちの周りに存在し、時には安心感、時には恐怖感を与える『気配』を具現化する為、彼は絵画制作を始めました。」と記されています。また、展覧会名である「spectral」は光の波長を成分ごとに分解、可視化する「スペクトル」に由来し、小泉悟が素材やモチーフ、メッセージを分解し、そこから現れる多様な社会を、新たに独自の視点で示すことに挑戦した展覧会であると紹介されています。なお、このギャラリーでの個展はこれが4度目でした。
この個展はアメリカで開かれた初めての個展です。こちらの展覧会では、小泉悟の作品を次のように紹介しています。小泉悟の作品が見せる純真さや純粋さは、その作品が持つ寂しげで不安げな悲壮感漂う空気によって、相殺されています。現代日本を含む多くの世界では、社会が高度に文明化されたことにより、人々は動物的本能と現代社会の狭間を歩まざるを得なくなっています。小泉悟の作品は現代人が重視する「カワイイ」を未熟さや非力さを補うための道具として利用しているという点を深く洞察しており、小泉悟はその現代の状況を、不安や寂しさを作品に込めることによって、自然や動物、人間と社会との結びつきの重要さを逆説的に表現しているのです。
この個展はMEGUMI OGITA GALLERYでの3度目の個展でした。この個展の開催にあたって、主催者は小泉悟というアーティストを「沖縄から東京、世界を見渡し、『ひとりであること』を見つめつづける」人間であり、「孤独を内包しつながりを望む現代を、生きるひとり」であると紹介しています。また、現代社会は文明の発達による恩恵を受けてきた半面、その弊害として人間らしさを保つことを困難にしてきたとも解説しています。そのような小泉悟の人間性や社会的背景が、憂いを帯びた作品の表情に表されていると言えるでしょう。
この個展は、MEGUMI OGITA GALLERYの協力によって、軽井沢ニューアートミュージアムが企画、主催し開かれました。主催者からのメッセージには、私たち人間は動物的本能に動かされながらも、自然界から離れて生活しており、小泉悟はそんな野性と理性の狭間で揺れる私たち人間を未成熟な存在として表現することに挑戦していると記されています。そして、それを表す展覧会名として「人?間」というタイトルがつけられているわけです。
こちらの個展では約7点の木彫り彫刻が発表されました。一見着ぐるみのかわいい人物象のような作品を通して、小泉は野性を表現する、と紹介されています。自然と共に生きてきた人間が文明化によって野性性を失っていくことはすなわち、生命の根源、生きることそのものを失うのと同義である一方、現代社会において、生きる手段となっている文明化や進歩は生きる喜びを失わせる対極とも言えると紹介されています。
これが小泉悟が出品した初めての個展です。この個展のテーマはタイトルの通り人と自然の「relation(繋がり)」でした。木彫りの人の不安そうな表情は、自然界から遠く隔たった動物としての「人」を認識させ、文明化によって失われる動物的感覚と、自然の一部として存在したいという人間の矛盾した想いを小泉悟が表現していると紹介されています。
このほか、日本のみならず、台湾や中国、韓国やシンガポール、アメリカなどで開催されたグループ展やアートフェアに多数出品しており、近年のアートフェアでは作品が完売することもある人気ぶりとなっている小泉悟は、まさに今注目の現代アーティストです。
小泉悟を象徴する作品と言えば、動物の着ぐるみのような毛皮を被った子供の木彫り、特に樟を素材にした彫刻です。そして、その子供の表情が楽しげではなく、いつも寂しそうな、憂いを帯びた悲壮感に似た空気をまとっているのが特徴的です。動物の毛皮に包まれた自分自身の姿に違和感を感じているのかもしれません。ここまでの展覧会の紹介を通してわかる通り、小泉悟の作品テーマは、「自然界から乖離していく現代人の憂い」であり、それが作品の表情に現れているのです。
一目見たときは、悲観的な雰囲気の得体のしれない生き物のたたずまいに驚かされるかもしれませんが、見れば見るほど親近感が湧いてきて、愛嬌さえ感じるようになってくるのが不思議です。彫刻は木彫りだけでなく、ポリストーンやレジン、近年は大理石作品も発表しており、また、彫刻だけでなく、絵画作品も発表しています。
小泉悟自身の手がけたオリジナル作品は、大量に流通しないため、評価も高く、高値で取引されやすいです。
公式ディズニーとのコラボレーションにより制作された、ミッキーマウスの着ぐるみを着たような子供が愛らしいこの作品の現在、売却する際の相場は100,000円~130,000円となっています。
シロクマの着ぐるみを着た子供が、右手に熊手、左手にバケツを持って立っている作品です。熊手で一生懸命に砂を集めても、バケツがいっぱいにならないのでしょうか、無表情で直立不動の子供の様子がほほえましく感じられる作品です。売却する場合の相場は100,000円~120,000円となっていますが、2020年、SBIオークションに出品されたオリジナルケース付きの木の作品は、予想落札価格200,000円~300,000円に対し、約480,000円で落札されました。同じく2020年、別の回の同オークションに出品された、ポリストーンで制作されたク品も、予想落札価格100,000円~150,000円を大きく上回る約410,000円で落札されており、小泉悟というアーティストの注目度の高さがうかがえます。
なお、同じくポリストーンで制作された別の作品は、予想落札価格範囲内の約180,000円で落札されています。ただ、こちらの作品はところどころに汚れや欠け、塗料の剥落があったり、ケースにも汚れや蓋に折れ跡があったようで、前出の作品と価格に大きな開きがあるのは、その保管状態によるものだったのかもしれません。
アート作品を取り扱うインターネットサイトでは、レジン製の限定230の作品が2,290米ドルで販売されています。
「空のバケツ」と同じ、シロクマの着ぐるみを着た子供が、両手に熊手とスコップを握ってしゃがんでいる様子を表現した作品です。バケツはどこにあるのか、帰りたくなくてしゃがんでいるのか、いろいろな情景がイメージできる作品です。その顔は無表情で、寂しげにも見えます。売却の際の相場は250,000円〜300,000円前後とされています。
2020年、木で制作されたオリジナルケース付きの作品は2021年、SBIオークションに出品され、予想落札価格を上回る460,000円で落札されました。
小泉悟は台湾や中国、シンガポールなどアジアを中心としたアートフェアやグループ展に精力的に出品しており、その作品も海外のインターネットサイトでの方が多く流通しているようです。ディズニーとの公式コラボレーション作品もマカオの政府がスポンサーとなり、マカオにあるArtelliで展覧会が開催されました。またそこに出品された作品は、会期中販売もされていました。
小泉悟の作品は、現定数が少なければ少ないほど、また、他の美術作品同様、保存状態が良いほど、売却や査定価格は高くなるでしょう。活躍の場も国内のみならず海外にも広く持っており、高く評価されていることから、今後さらに注目度が上がっていくアーティストです。したがって、その作品の価値も上昇していくことが予想されるため、購入や売却を検討している場合には、そのタイミングを見極めることも大切だと言えそうです。