2024.01.24
花器
2024.01.24
みなさんは「(アンティーク)花瓶」をご存知でしょうか?ヴィンテージ感とレトロな雰囲気がおしゃれな、アンティーク花瓶。アンティーク花瓶といってもフランス・イギリス・アジアなど色々な地域のものがあります。また、素材についてもガラスや陶器とさまざまなものがあります。本記事では、そんなアンティーク花瓶とはどういうものなのか、買取が可能かについて、アンティーク花瓶に興味ある方やこれからアンティーク花瓶を集めようと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
花瓶には色、形、模様、材質や大きさは多様性に富んでいます。多くの花瓶は挿された花をより良く見せるようにデザインされています。花瓶の外見は中に挿される花の印象を左右する要素であり、同じ花でも挿す花瓶によって雰囲気が変わってきます。花瓶の構造の各部分は人体構造の火部分に例えられます。花瓶の底は足と呼ばれます。花瓶が簡単に倒れないように足は安定感があるように設計されています。足の上に胴があり多くの場合、膨らみを伴っています。胴の上部にある肩で花瓶の径は急に狭まり首に繋がっていきます。花を挿し込む口が開いています。全ての花瓶がこれに当てはまるわけではありません。例えば掛け花瓶の足は尖っていたり丸みを帯びているため自立できません。
このようにひとくちに花瓶といっても種類があります。
主な地域における花瓶にまつわる歴史、背景を解説していきます。
目次
仏教の儀式において重要な役割を担っていました。花瓶は香炉、燭台と共に三具足を構成し、仏様の供養のため欠かせない道具です。仏具としての花瓶の多くは、首や胴に紐飾りが施されていました。浄土真宗においては「華瓶」または「花鋲」(どちらもけびょうと読みます)と称され、基本的に一対で使われます。その用途は花挿しではなく、水を入れが華瓶に”しきみ”を挿し香水として供えるというもので、水を貴重なものとするインド仏教の作法になります。仏教の諸宗派は茶碗や湯呑みを用いて、水を供えますが浄土真宗ではインド仏教の作法に従い華瓶を使って水を供えています。
また、茶道においては「花入」と呼び、茶室を彩り、茶席に華やかさを持たせる意味合いで花瓶が使われています。茶席に使われる花瓶は竹を切っただけの簡素なものもありますが落ち着きのある素焼きの花瓶など茶室の雰囲気に合ったものが使われます。
李氏朝鮮時代の花瓶は、中国に影響を受けて始まり最盛期を迎えていた白磁や青磁が主流でした。中でも高麗青磁の名品は日本においても高く評価されていましたが技術継承が滞りがちであったため徐々に衰退し、中国の影響で白磁にごく控えめの花鳥をモチーフにした色絵をつける独特の様式が現れるようになりました。
古代ギリシア人は花瓶に風景を描いていました。その描写は今日の考古学者たちに、当時の生活に関する貴重な情報を提供しています。
ザクセン選帝侯フリードリヒ・アウグスト1世は、東洋の磁器に関心があり熱心な収集家でした。選帝侯は特に景徳鎮や有田を好み、東洋製花瓶に対する熱狂を伝える逸話の一つに、プロイセン王が所持する青磁花瓶を入手するため600人の自国兵士との交換を申し出たという話があるぐらいです。
これらのように花瓶には芸術作品としても発展してきました。花瓶に花を挿すことで花も花瓶もより映えるのですが、芸術的に優れた花瓶はそれ自体が部屋の装飾にもなります。
花瓶のデザインを専門とする芸術家は花瓶デザイナーと呼ばれています。世界的に有名な花瓶デザイナーとしては2003年にターナー賞を受賞したグレイソン・ペリーらが挙げられます。
花瓶においても色々なブランドがあります。そのブランドとそれぞれの買取相場をいくつか紹介します。
オールドノリタケは明治期から戦前までに海外輸出していた、日本を代表する陶器ブランドです。
気品あふれる形とデザインで、現在でもコレクターの間で高い人気があります。輸出のみだったので日本国内で販売されることがなかったため、高価買取される可能性があります。
買取相場は〜60,000円ぐらいが多く、アールデコ八角花瓶が約13,000円程度、カモメ文花瓶が約40,000円程度、風景文花瓶が約60,000円程度となっています。アールデコは一定の人気がありますので他のものより少し期待できそうです。
マイセンはヨーロッパで初めて硬質磁器を生み出した磁器ブランドです。300年以上の歴史があり、今も色褪せない美しさで多くのファンに愛されています。
中でも、1924年以前に製作されたオールドマイセンと呼ばれる作品は高値で取引される可能性があります。しかし偽物が多く、偽物の場合や真贋鑑定が難しいときは買取を断られる場合があります。
全体的な買取相場としては〜約100,000円ほどで、名称不明でも約30,000円〜約40,000円程度で買い取られる事例もあります。また、花鳥図大花瓶が約70,000円程度、大花瓶(名称不明)が約100,000円ぐらいです。
ラリックはフランスのガラス製品ブランドです。ルネ・ラリックの高い技術による繊細で彫刻的なデザインが特徴です。130年以上の歴史があり、現在ではグラス・食器・照明器具など多岐にわたる製品を生み出しています。花瓶にはさまざまな種類がありますが、その中でも初期の頃の作品に高値がつきやすい傾向になっています。
全体的な買取相場は〜約1,000,000円ほどで、ブコリック花瓶は約40,000円前後、バコーントゥ花瓶が約100,000円前後ぐらいの相場感です。思わぬ金額になることも考えられます。
深川製磁は明治27年創業の老舗で、有名な有田焼の陶磁器メーカーです。「フカガワブルー」と呼ばれる藍色の染付と艶やかな質感は、日本だけに限らず世界でも高く評価されています。戦前に製作された花瓶は高値で買取される可能性があります。
買取相場としては〜約200,000円ぐらいが多く、梅に鶯 花瓶が約4,000円程度、木蓮孔雀大花瓶が約200,000円程度というように、物によってかなり幅があります。
バカラはフランス発祥のクリスタルラグジュアリーブランドです。ガラスの質が非常に良く、各国の王室や日本の皇室からも注文を受けています。洗練されたデザインと品質を保ち、250年経った今も世界中を魅了しています。
ウェブで公開されている全体的な買取相場は〜約230,000円。アルクール花瓶が約15,000円、竹模様花瓶が約230,000円で買取されています。
・hoyaクリスタル
hoyaクリスタルは日本を代表するクリスタルガラスブランドのひとつです。高い透明度と屈折率の高いカット面が特徴です。現在、クリスタル事業を撤退していますが、花瓶の他にもグラス、トロフィー、ジュエリー等を生産しています。
全体的な買取相場は〜約5,000円ぐらいです。買取相場例としては花瓶(高さ24cm)が800円、佐々文夫 花瓶が約3,000円、花瓶(名称不明)が約5,000円などで、数百円を切るケースもあります。
他のブランドと比べると花瓶においての買取は見劣りしてしまいます。
ボヘミアングラスはボヘミア(チェコ)で作られるガラス製品のことです。ボヘミアングラスの中でもモーゼルは最高峰で、高い透明度と繊細なカットが特徴的です。買取においてはカットや金彩などが使われているものが高値で取引されやすい傾向にあります。
買取相場は〜約8,000円ほどで、高さ26cmの花瓶で約3,000円、モーゼル花瓶が約7,000円〜約8,000円ぐらいで全体的に数千円のものが多いようです。
ベネチアングラスはイタリアのムラノ島で作られているガラス製品のことです。別名ムラノグラスとも呼ばれています。デザインや鮮やかな色合いが特徴的です。
ベネチアングラスは種類が多いため買取相場はさまざまで、モノによっては高値が付くこともあります。手書きや金彩などであれば高値で買取が期待できそうです。ただ、一概にベネチアングラスといっても全く異なるものもあるようです。約1,000円ぐらいのものから約100,000円以上なるものまで買取の期待はできそうです。
次に作家別の買取相場を少しご紹介いたします。
酒井田柿右衛門は日本で初めて赤絵の焼成に成功した人物です。慶長元年から代々受け継がれている名窯元です。乳白色の白磁に赤を主調とした花鳥人物文などを焼き付けたものを「柿右衛門様式」と言われています。
買取相場の多くは〜約150,000円での買取が多いようです。一例ですが十三代酒井田柿右衛門の錦秋草鶉文花瓶が約10,000円、十四代酒井田柿右衛門 錦芙蓉文花瓶は約120,000円ぐらいで買い取られます。しかし、濁手四方割花文花瓶や濁手三方割花瓶などは1,000,000円を超えるケースもあります。
金重陶陽は備前焼を再興させた陶芸家で備前焼の陶工としては初めての人間国宝に認定された人物です。土・焼き・作りが三位一体となっている備前焼らしい作風が特徴です。現在もコレクターからは根強い人気があります。概ね〜約500,000円ほどで買取されるようで備前耳付花入は約200,000円、備前擂座花入は約350,000円前後が買取価格相場のようです。また、象水滴などは高額買取が期待できます。
金城次郎は「琉球陶器」で沖縄県初の人間国宝に認定されました。独創的な世界観とユニークな作品は、日本だけでなく海外からも評価が高いです。魚や海老をモチーフにした絵柄が特徴的で現在もコレクターの間で根強い人気があります。
買取としては約100,000前後の買取が多いです。作品の名称が不明でも状態が良ければ数万円で買取されています。
エミール・ガレはアール・ヌーヴォーを代表するフランスのガラス工芸家です。ガラス工芸以外にも陶器・家具のデザイナーとして才能を発揮しました。作品は植物や昆虫など自然をモチーフとしています。現在でも世界中で人気があります。
買取相場としては〜約820,000円程度となっています。湖水風景文花瓶が約700,000円、オンベル文花瓶で約800,000円程度で買い取られることが多いです。
ドーム兄弟もアール・ヌーヴォーを代表するガラス工芸家です。風景や植物をモチーフにした作品が多いようです。
買取相場は〜約1,500,000円程度で夏景色文花瓶が約520,000円、マーガレット文花瓶で約900,000円、バラ文花瓶に至っては約1,500,000円で買取されています。
このようにそれぞれ買取相場はさまざまですが高価買取されやすのは、状態がいいものが売れやすいようです。ただ、年代や希少性も重要となってきます。
花瓶は小さなキズ一つでも価値が下がってしまうため、布製手袋を使用し直射日光が当たらない湿気の少ない風通しのいい場所で保管することが大切です。また必要以上に触らないようにし、掃除も最低限のものに留めておくのがいいようです。
購入時についていた箱、説明書、鑑定書などが揃っている方が高く売ります。特に箱や鑑定書は花瓶が本物であることの証明にもなります。
アンティーク品と呼ばれる花瓶は、数十年から100年以上前に作られたものを言います。それよりも前の年代を骨董品と呼ぶなど日本においては年数にやや揺れがあるようです。それぞれの年代の花瓶で状態がいいものは歴史的にも美術品的にも価値があるため高く売れやすいようです。
また、コレクターは希少価値のある年代物を求めていますのでそういった花瓶は必然と価格が高騰する傾向にあります。
本記事では花瓶の歴史、ブランド、作家についてご紹介してきました。
これから集めようと考えている方も手放そうと考えている方も気になる方も花瓶を査定・売却したい方はぜひ参考にしてみてください。