2024.05.23
作家名
2024.05.23
「D*Face(ディーフェイス)」というアーティストについてご存じでしょうか。ロンドン出身のグラフィティアーティストで、自身の作品を制作する傍ら、イラストレーターとしてデザインもしており、アパレル商品や小物などにもそのイラストが採用され、様々なコラボ商品も販売されています。また、イギリスやフランスやアメリカ、スペインなど世界各地で壁画も制作しています。ここでは、イギリス人グラフィティアーティスト、D*Faceについて取り上げていきます。
目次
D*Faceは1973年、イギリスで生まれ、ロンドンで育ちました。本名はDean Stocktonといい、子供のころに読んだ「地下鉄アート」に影響を受け、絵を描き始めました。10代のころは、スケートボードに夢中になり、そのデッキに描かれている絵が、スケートボードやパンクミュージックに関係するステッカーに興味をもつきっかけとなりました。
高校を卒業後、ロンドンのデザインカレッジに入学し、イラストとデザインを学びます。その後はストリートアートの腕を磨きながら、フリーランスのイラストレーターやデザイナーとして働いていました。その間、アメリカ人ストリートアーティスト、シェパード・フェアリー(Shepard Fairey)が行った、後に「Obey Giant(オベイ・ジャイアント)」とよばれる街中に自作のステッカーを貼るアート活動やヒップホップ、パンクミュージック、アニメなどに影響を受けたと言われています。なお、「Obey Giant」を行ったシェパード・フェアリーは、政治的メッセージを積極的に発信する活動家でもあり、2008年にバラク・オバマ元大統領の当選記念ポスター「Hope」を手がけたアーティストとして知られている、アメリカを代表するストリートアーティストです。
D*Faceがフリーランスとして活動していたころから、現在まで使用されているイメージデザインが「D*Dog」です。丸い顔に天使の羽のような耳、そして舌を出したデザインのキャラクターは多くの商品にデザインされたり、コラボ商品が販売されたり、フィギュアが制作されたりしています。D*Faceのシンボルとも言えるキャラクターです。
D*Faceはロンドンで初めてのストリートアートを専門とした現代アートギャラリー「Outside Institute」のオーナーであり、キュレーターでもありました。2005年に、D*Faceはこの「Outside Institute」をブランディングしなおし、移転して「Stolen Space Gallery」として、オープンしました。このギャラリーは、自分の仲間や才能ある若手アーティストが自由に作品を発表できる場所を提供することをモットーに運営されており、有名無名に関わらず、多くのアーティストの作品を展示し、発表しています。D*Face自身もこのギャラリーの所属アーティストとして活動しています。
壁画は、D*Faceの中核とも言える作品です。アートについてD*Faceは「情報が飽和状態の現代世界において、アーティストが制作活動を行う上では、作品を群衆から目立たせることが重要であり、それを成し得るのは壁画をおいてほかにない」と語っています。世界各地で対峙してきた壁画はD*Face独自の挑戦であり、彼自身のアイデンティティでもあるのです。世界各地に壁画を描いてきたD*Faceですが、以下に日本で描かれた作品を紹介します。
ーD*Dogが壁の淵に半分だけ描かれた作品です。
ー赤と白でD*Dogが描かれています。
ーサンリオのキャラクター、ハローキティをモチーフにした作品です。
ーアメリカンコミックで描かれるような女性が涙をこぼす表情が描かれています。
ータイトルの通り、オリジナルのD*Dogを真ん中に上下2つずつ顔の異なるD*Dogが積み重なって描かれています。
D*Faceは様々な企業やアーティストとのコラボ商品も発表しています。以下に、日本でもよく知られた企業やアーティストとのコラボ作品の一部を紹介します。
アメリカのバンドBlink182のアルバムカバーを手がけました。バンドメンバーの一人と親交があったことから、コラボ作品が実現したそうです。
D*Faceが初めてロンドンに描いた壁画が描かれたZippoのライターです。
スコットランドの会社が展開するスコッチウイスキーブランド、ヘイグ(Haig)と元サッカー選手、デビッド・ベッカムがコラボして発売した商品です。瓶にデザインが直接印刷されたものは1000本の限定品でした。
ユニクロ店舗の壁に壁画を制作し、D*FaceがデザインしたTシャツが販売されました。
D*Faceは2006年にイギリスで初めての個展を開催してから、毎年のように世界各地で展覧会を開いています。
2006年 「Death &Glory」(Stolenspaceギャラリー・イギリス・ロンドン)
ーこれがD*Face初めての個展です。
2007年 「Eyecorns」(O conttemporary・イギリス・ブライトン)
2008年 「Apopcalypse Now」(Black Rat Press・イギリス)
2009年 「Ludovico Aversion Therapy / All Your Dreams Belong To Us」
(Jonathan Levine ギャラリー・アメリカ・ニューヨーク)
2011年 「Going Nowhere Fast」(Corey Helford・アメリカ・ロサンゼルス)
2013年 「New World Order」(StolenSpace・イギリス)
「One Man & His Dog」(バルコギャラリー・東京)
ーこれはD*Faceの作品集「One Man&His Dog」の刊行を記念して行われた展覧会です。
2014年 「Honesttly Dishonest」(Above Second・香港)
「Scars and Stripes」(Hollywood・アメリカ・ロサンゼルス)
2015年 「Wasted Youth」(CAC Malaga美術館・スペイン)
2017年 「Happy Never Ending」(Corey Helford ギャラリー・アメリカ・ロサンゼルス)
2018年 「FORNEVER」(ギャラリーItinerrance・フランス・パリ)
「HOME IS WHERE THE heART IS」
(Treasonギャラリー・アメリカ・シアトル)
2019年 「Social DIScontent」(西武渋谷ギャラリー・東京)
2020年 「ARCHIVE UNSEEN」(Stolenspaceギャラリー・イギリス・ロンドン)
「POOR CONNECTION」(DOPENESS ART LAB・台湾・台北)
2021年 「UNITY」(Stolenspaceギャラリー・イギリス・ロンドン)
「A RIGHT ROYAL S#!T SHOW」
(Stolenspaceギャラリー・イギリス・ロンドン)
2022年 「PAINTING OVER THE CRACKS」
(Corey Helford ギャラリー・アメリカ・ロサンゼルス)
「STRANGE LOVE」(Space Fountain・韓国・ソウル)
2023年 「SILVER SCREEN EYE-CONS」
(Wunderkammernギャラリー・イタリア・ミラノ)
「TARGET FIXATION」(ギャラリーItinerrance・フランス・パリ)
世界各地で年に1~2回と膨大な回数の展覧会を開いているのは驚異的と言えるでしょう。
2019年にロンドンで行われたフィリップスオークションで、「Superman」というパネルにアクリルと紙でコラージュが施された85.5センチ×61.2センチの作品は6,250ポンド(現在のレートでおよそ1,150,000円)で落札されました。予想落札価格の上限5,000ポンドを上回る価格でした。
同年、ロンドンで開かれたフィリップスオークションでは「Canis Servo Regina」というシルクスクリーンが1,125ポンド(約200,000円)で落札されました。
2012年にニューヨークで行われたフィリップスのオークションに出品された「Don’t Hate the Player Hate the Game」という布にアクリルで描かれた124.8センチ四方の作品も6,250ポンド(約1,150,000円)で落札されています。
D*Faceの作品は、壁画などはもちろん購入できませんが、その関連商品も含めるとオークション以外でも比較的容易に購入することができます。シルクスクリーンであれば、数十万円から購入できます。公式ウェブサイトでもステッカーが20ポンド(約3,500円)で販売されています。D*Faceのアイコン、D*Dogの立体作品フィギュアも数量限定で、10,000円程度で販売されていました。
D*Faceの作品は、インターネット販売やコラボ商品の販売も含めて、流通しているものが多いため、手に入れることはさほど難しくないかもしれません。しかし、それらの商品は期間限定品や数量限定であるため、プレミア価格がついているものも少なくありません。前述のD*Dogの立体作品フィギュアは現在70,000円程で販売されているものもあります。
一方、シルクスクリーン以外のオリジナルペイント作品は流通量も少なく、希少価値も高いと言えるでしょう。オークションでは数百万円で取り引きされているようです。D*Face関連商品や作品の売却を検討している場合は、相場を見極め、慎重に査定業者を選ぶ必要があるでしょう。