2023.11.26

天明屋 尚(てんみょうや ひさし)とは、どんなアーティスト?略歴や作風、作品の特徴や現在の買取価格について解説

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「天明屋尚」(てんみょうや ひさし)は、日本画と現代風俗を融合させた独自の概念「ネオ日本画」を発案、提唱し、活動を行っている日本人現代アーティストです。天明屋尚という名前はアーティスト名だと思われるかもしれませんが、本名です。国内外で多くの展覧会に出品したり、個展を開催したりする傍ら、メディアにも多数取り上げられ、2006年に行われたサッカーワールドカップドイツ大会の公式ポスターの制作に日本代表作家として参加するなど、幅広くかつ精力的に活躍しています。ここでは、そんな日本人現代アーティスト、天明屋尚について解説していきます。

略歴

 天明屋尚は1966年に日本で生まれました。子供のころから絵を描くのが得意で、独学で絵画を学び、レコード会社に就職、CDのジャケット制作を行うアートディレクターとしての立場を経て、30代に入ってから現代芸術家としての活動を始めました。天明屋尚を語る上で欠かせないキーワードは「ネオ日本画」と「BASARA」です。

ネオ日本画

 現在、日本画というと、水彩や墨で描かれた絵であるというイメージが強いですが、本来、日本画には「非写実的」「陰影がない」「輪郭線がある」「表現が簡素」「色彩が濃厚でない」という特徴があります。

 天明屋尚はこれら日本画本来の特徴に浮世絵や唐絵の装飾性を取り入れ、新しい美術のジャンルとして「ネオ日本画」という概念を考案しました。従来の日本画のように画材にこだわることもなく、アクリル絵の具など、新しい画材も取り入れ、それまでの日本画の世界観を現代風に発展させ、アレンジした画風が特徴的です。天明屋尚は、そのような画風で、神様や仏像、戦国武将、傾奇者(かぶきもの)など日本伝統絵画で描かれてきたモチーフを描いた作品を展開しています。浮世絵などの伝統的な日本絵画と現代のモチーフを融合させ、「サッカーをする鎧武者」や「浮世絵のガンダム」などユニークな作品を多く制作しています。ストリートアートのようなポップな題材を日本の技法で描いており、SFや入れ墨、グラフィティや社会風刺、仏像、武将などを融合させた作品が多く見られます。

BASARA(ばさら)

 BASARAとは天明屋尚が2010年に提唱した美術概念で、天明屋尚が理想とするアートを表す概念です。権威主義的な美術体制に対して、絵で闘う流派「武闘派」を旗揚げし、反骨精神に溢れ、活気ある激しい文化、華美で破格的な文化をBASARAと名付け、自身の芸術活動コンセプトとしています。それは従来のステレオタイプの日本像を武人的な日本ストリート文化の観点から見つめなおし、日本とその素顔を描こうとする試みです。そして、同時に現代美術と日本美術の垣根をなくして接続する試みでもあると語られています。

 もののあわれ、わび・さび・禅、カワイイ、オタクなど日本を象徴する文化の、繊細な部分をリアルで鮮烈な色彩で浮かび上がらせ、祝祭的な日本美術の側面を表現する、神格化された芸術や伝統の殻を破り、そこから脱出しようとする姿勢がBASARAです。天明屋尚自身、「日本美術の静謐で弥生的な美の作法により無視されがちな縄文的な要素の方にこそ、私に言わせれば、かえって生々しい日本の現実、素顔を含んでいる」と述べています。そしてBASARAが描くのは「キャンバスに刃を突き刺し、真っ赤な鮮血がほとばしる」ような光景なのだと述べ、BASARAは日本内部から日本の伝統美術であるジャポニズムを突き破る美の黒船であると語っています。

 このように、天明屋尚は、日本の文化と歴史を結び、美術史をダイナミックに改変していくという独自のコンセプトのもとで、作品展開を行っています。

TENGAI GALLERY

 

 天明屋尚は2012年7月から2013年8月まで、自身がプロデュースを行うアート拠点、コマーシャルギャラリーとして「TENGAI GALLERY」を運営していました。このギャラリーは新進気鋭のアーティスト紹介の場であると同時に、BASARAの世界観を伝える場としても活用されていました。その後、「TENGAI GALLERY」は「TENGAIプロジェクト」として生まれ変わり、現代美術の様々なジャンルにわたって、新たな才能を発掘し、展覧会を企画、開催してきました。

現美庵(現代美術庵)

 「現美庵」は、天明屋尚は「BASARA」や「TENGAI」の概念を継承し、統合する形で立ち上げた概念であり、運動体であり、事業体です。従来の発想や固定された空間、常識や慣習に囚われず、美術の制度に批評的な姿勢を示し、日本美術の現代的な再定義を模索する場として設立されました。「現美庵」を立ち上げた背景として、西洋美術が主導している美術界において、日本美術の評価を高め、西洋美術とは異なる独自の多様性を担保しながら世界基準で見直されることを目指しています。

 この「現美庵」には天明屋尚のほか、加藤美紀、玉田圭詮、世良郎二というアーティストが所属しています。

作品テーマ

 天明屋尚の作品テーマを一言で表現するなら「英雄」です。天明屋尚の作品は、個展で作品を発表する際、コンセプトや描写方法が毎回大きく異なるため、ともすれば個展ごとに違う人が描いたと思われてしまうこともあるそうです。しかし、コンセプトや描き方に違いがあっても、共通しているテーマは「英雄」です。神話世界の荒ぶる神々、甲冑武者、侠客など歴史的なものから戦隊ヒーローに至るまで、一貫してそれらの英雄的なイメージを日本美術の様式に載せて描いているのです。

代表作

「韻」(2012)

 「韻」は2012年10月に東京のミヅマアートギャラリーで開催された個展で展示されました。絵画とインスタレーション、テキストを組み合わせた複合型の作品です。絵画はレオナルド・ダ・ヴィンチの「アンギアーリの戦い」などの騎馬図にインスピレーション受けて制作されたそうです。インスタレーションは真紅の枯山水で表現されています。来場者には、テキストが配布され、作品に隠された仕掛けを読み解きながら鑑賞することを意図した作品となっています。

「五輪画」(2009)

 この作品は2009年12月にミヅマアートギャラリーで行われた個展「風流」で展示された5枚で1つの作品です。宮本武蔵の「五輪書」から着想を得て制作されました。「五輪書」の中で武蔵は形骸化していく兵法を批判し、幕藩体制には見向きもせず、孤軍奮闘の人生を送りました。そんな定型や安定を嫌い自由に生きた傾奇者、武蔵の姿とイメージが重なる作品です。なお、この展覧会のタイトル「風流」は「ふりゅう」と読まれ、「ふうりゅう」とは意味が異なります。「ふりゅう」は人を驚かせるために華美な趣向を凝らした意匠、デザインのことで、わび・さびとは正反対の美意識を指すと説明されています。

「蹴球之図」(2004)

 

 「蹴球之図」は2006年のFIFAワールドカップドイツ大会を記念して制作された公式アートポスター作品です。世界5大陸9カ国から、14人のアーティストが選ばれ、日本人で唯一天明屋尚が選ばれ、作品を制作しました。海外から見たステレオタイプな日本を象徴する戦国武将の鎧兜でサッカーの対戦を表現したユニークな作品です。

「ネオ千手観音」(2002)

 「ネオ日本画」を提唱した天明屋尚を象徴する作品が「ネオ千手観音」です。誰もが一度は見たことがあるであろう千手観音が、その手にナイフやライフルを持っています。日本の伝統的な仏画と兵器という異色の組み合わせが印象的で衝撃的な作品です。奇しくもこの作品の制作を始めたころ、2001年9月11日にアメリカ同時多発テロが起きます。宗教や信仰と暴力は表裏一体であるということを表現したいという思いで、この作品を描いたと天明屋尚自身が語っています。

作品の取引価格

オークション

 2008年6月、香港で開催されたクリスティーズのオークションに、「GUNDAM 来るべき未来のために展」に出展された「RX-78-2傾奇者2005Version」という作品が出品されました。これは、機体に入れ墨が施されたガンダムの腰回りに、龍が巻きついており、その手には黒いマシンガンを持っている作品です。これが481万香港ドル(当時のレートにしておよそ6,400万円)という破格の値段で落札され、話題となりました。

 2020年にSBIアートオークションに出品された「Stand」という作品はおよそ172万円で落札されています。

 

販売

 天明屋尚の作品は、日本国内でもギャラリーを通じて購入することができます。価格は非公開のものもあり、作品によって異なりますが、話題になった展覧会作品や人気の作品は非常に高値で売買されています。価格が公開されているものの中から一例を挙げると、ガンダムを思わせるロボットが日本画風に描かれた「Robot Myouyou」(2016)や「Robot Aizen Myouou」(2016)、機械化されたカブトムシのようなロボットを、その上に乗った男性が操縦している「Japanese Spirit#18」(2015)は75,000ドル~100,000ドル(現在のレートでおよそ1,080万円~1,450万円)の価格が提示されています。さらに高額な作品は、屏風のようなパネルに描かれた「Battle of Ise/Flying Dragon Riders」(2017)という作品です。そのタイトルの通り、飛んでいるドラゴンに乗った人々が戦う様子が描かれています。この作品には100,000ドルから150,000ドル(約1,450万円~2,100万円)という破格の値段が提示されています。

売却・査定

 天明屋尚は、独自の世界観を持ち、既存の概念を超え、新たな概念を提唱し、活動している精力的なアーティストです。その作品も、独特の雰囲気を持つ唯一無二のものです。絵画作品は数百万円から数千万円と幅広い価格で取引されています。もっと手軽に天明屋尚の作品を楽しみたい場合には、そのポスターなどであれば数万円から手にすることができます。天明屋尚は海外でも高く評価されているアーティストであり、今後の活躍も期待されています。天明屋尚の作品の売却や購入を検討している場合は、信頼できる査定業者やギャラリーを選ぶことが大切です。ぜひ、いくつかの業者やギャラリーに足を運び、見積を依頼するなどして、納得できる価格で購入や売却ができるようにしましょう。

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